研究課題
窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)はそのバンドギャップエネルギーが深紫外波長域に対応していることから深紫外発光素子応用に有用であり、励起子束縛エネルギーが室温以上であることから従来の用途に加えて量子光学応用に適した物性を有する。また窒化物半導体の最安定相であるウルツ鉱型構造はc軸方向に反転対象が欠如していることから極性を持ち、N極性(000-1)とIII族極性(0001では逆方向の分極(自発分極・圧電分極)を有する。 窒化物半導体の極性面成長において、分極効果は電子と正孔の波動関数の重なり積分を小さくして発光効率を低下させる量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)として知られている。本研究では、このQCSEとなる分極効果を逆手にとり、量子光源応用にも有利な物性を有する窒化物半導体において、量子ドットのような局在化したエネルギーポテンシャルの作製方法として、結晶極性起因の逆符号分極電荷の導入を提案している。具体的には、AlNの結晶極性起因の逆符号分極電荷により、分極効果によるAlGaN量子構造のエネルギーポテンシャルの局在化を行う。2023年度は、昨年度調べた積層方向に極性反転したAlNテンプレートの作製条件に付いて更に詳細に調べ、積層方向に多層に極性反転ができることを見出した。ウエハボンディングで実現できる2層構造より更に多層の極性反転構造が実現できたことは本研究課題の応用のみならず、波長変換素子などへの応用にも有用である。また、表面の経時的な酸化による影響を受けず極性を保ったまま成長できる手段を検討した。
2: おおむね順調に進展している
2層以上の多層の極性反転構造を積層方向に数百ナノメートル程度の膜厚で実現できたことは、研究計画以上の進捗である。一方、面内極性反転構造の実現に対しては、表面酸化膜の除去などの条件検討を進めており当初の研究計画より僅かに遅れているが、先行してミクロスコピックな領域での光学測定評価ができる環境を整えた。これらを総合するとおおむね順調に進展していると考えられる。
極性反転構造の多層化について、未知の部分である可能な最小膜厚などを調べて、応用に繋げる。また、MOVPE再成長前の炉内での処理を工夫することで、極性と平坦な表面を保ったまま再成長する手段を試み、再成長後に光学測定を行う。
多層極性反転構造の作製を進めたため当初予定よりMOVPE成長に使用する原料費等が予定より少なくなった。この費用は2024年度に当初予定した実験およびその成果発表に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 9件、 招待講演 4件)
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