テラヘルツ周波数帯の電磁波は技術開発が遅れている。本研究では電子ビームを利用した大強度テラヘルツ波源である表面波発振器にプラズモニック構造を組み込み、そこに励起される表面電磁波モードの制御を試みる。モードの制御によって高効率な大出力テラヘルツ波源の実現を目指す。前年度までの実験ではベクトルネットワークアナライザを用いて電子ビームが存在しない系での実験を行いモードの制御ができることを確認していた。 今年度はプラズモニック構造を組み込んだ表面波発振器に電子ビームを入射しテラヘルツ波発生実験を行った。しかしプラズモニック構造による有用な効果は得られなかった。そこでプラズモニック構造を用いないでテラヘルツ波発生実験を行った。実験の結果、0.4THzの周波数で1kWの大出力テラヘルツ波の発生を確認した。この実験結果は論文にまとめ、IEEE Transaction on Electron and Device誌に掲載された。発生したテラヘルツ波のモード特性を調べるためテラヘルツ波放射の非対称性に着目した。実験結果の解析と数値計算から、複数の表面電磁波モードが励起された場合に放射強度の角度分布が非対称になることを発見した。テラヘルツ波は検出技術が未熟なため励起された電磁波モードを区別することが難しい。今回の研究成果によって、放射の非対称を指標にすることで励起されたモードを調べることが可能になった。この研究成果をまとめた論文はJapanese Journal of Applied Physics誌に掲載された。 今後の研究では、単一の電磁波モードが励起される場合に相当する対称的なテラヘルツ波放射が得られる条件を探っていき、モード制御の実現を目指す。
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