研究課題/領域番号 |
22K14628
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
石澤 倫 東北大学, 金属材料研究所, 学術研究員 (10911125)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 近赤外発光シンチレータ / 高線量率場 / 高融点材料 |
研究実績の概要 |
本年度は原子炉内部でも使用可能な光ファイバー、シンチレータならびに光検出器からなる高線量率場で用いられる遠隔線量モニタについて特にシンチレータに関する研究開発を行った。 炉内の一部で10 Sv/h以上と非常に高い空間線量率が予測されるため、既存の放射線計測機器では故障や大量のノイズにより計測が不可能であると想定される。そのため高線量率場で用いられる遠隔線量モニタは、放射線耐性があるシンチレータのみを炉内に入れ、その場の線量率に応じたシンチレータの発光について光ファイバーを介して比較的線量率の低いエリアまで伝送させ光検出器で読み出すことで、線量測定を可能にする。ただし、シンチレータには強い透過力を持つガンマ線に対しても高い阻止能が必要であり、さらには光ファイバーには高線量率場でUV-青色程度の波長にチェレンコフ光やファイバーの欠陥によるシンチレーション光といった深刻なノイズが発生するといった問題があった。 本年度はシンチレータのガンマ線に対する高い阻止能や、ノイズに対する信号の比(S/N比)の向上を狙い、HfやLuなどを含む高融点酸化物に赤色-近赤外発光を示す発光賦活剤を添加し、2 mm 角以下の近赤外発光シンチレータ結晶の育成を目指した。シンチレータ結晶の育成は近年開発された高融点材料探索法であるコア・ヒーティング法(CH法)を用いて実施した。近赤外発光を有するNd添加Lu2O3, Nd添加Gd2Hf2O7, Nd or Yb添加La2Hf2O7について1×2 mm角、1 mm 厚程度の結晶育成に成功し、特にYb1%添加La2Hf2O7については0.18-2.1 kGy/hの高線量ガンマ線環境下で高線量率場用遠隔線量モニタに用いられるシンチレータとして応用可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2400℃以上の融点を持つ材料は、従来の材料探索法であるIr坩堝を用いたμ-PD法(適用温度が~2100℃ 程度まで)では結晶育成が難しく、それらの透明体結晶を用いた材料探索やその特性評価が進んでいない。2022年度は、当初の予定通りCH法により融点が2400℃を超えるHfやLuなどを含む近赤外発光酸化物の結晶育成を実施し、さらには高線量率場用遠隔線量モニタのシンチレータとして、高線量率場(0.18-2.1 kGy/h)におけるYb添加La2Hf2O7シンチレータ結晶の応用可能性を示すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は当初の計画通り、引き続きHfやLuなどを含む近赤外発光酸化物の結晶育成を実施する。さらにはモンテカルロシミュレーションコード(PHITS)も使用して線量推定の方法について検討を進める。2022年度にCH法による結晶育成ならびにその光学特性の評価を実施できたことで、2023年度は賦活剤の最適化を進めることが可能となり、HfやLuなどを含む近赤外発光酸化物結晶の発光強度の向上が期待される。2023年度には本研究に関する論文化を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文査読後の英文校閲用の費用として使用予定だったが、査読期間の延長により2022年度中に英文校閲の依頼ができなかったため次年度使用額が生じた。次年度使用額については2023年度に論文の英文校閲費用として計上する予定である。
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