研究課題
本研究は,古生代~現世の貧酸素環境で形成した堆積物を対象に,レアメタル濃度と堆積物中でのレアメタル元素の存在形態に関する情報を取得し,その結果から推定される海洋の酸化還元状態や主要なレアメタルのホスト相・化学種などを制約条件に海洋から堆積物への元素沈積フラックスモデルを構築することを目的としている.これにより,レアメタル元素の濃集を支配する真に重要な過程は何か,どのような環境条件が揃うと資源と呼べるレベルまで元素が濃集するのかを定量的に検証することで,貧酸素環境における堆積性レアメタル鉱床の成因を明らかにする.令和5年度には,まずカリアコ海盆の最表層試料に対してマルチコレクタ誘導結合プラズマ質量分析装置 (Multi Collector Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry, MC-ICP-MS) によるレニウム (Re) 濃度測定を行い,その結果をもとに黒色泥,黒色頁岩のRe資源としてのポテンシャルの見積もりを行った.結果については,日本地質学会第130年学術大会で発表を行った.また,新規サンプル(ODP Site 1207 (Shatsky Rise) とイタリアGorgo a CerbaraセクションのOceanic Anoxic Event (OAE) 1aのサンプル)に対して,全有機炭素量・全硫黄量の測定を行った.さらに,これらのサンプルの主要・微量元素濃度のデータを加えたデータセットに対して独立成分分析(ICA)を行い,レアメタル元素の濃集メカニズムの検討を行った.その結果についての論文を現在準備中である.
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的を達成するためのデータの取得,解析が進められているため.
今後はMC-ICP-MSを用いたRe濃度分析を行いデータを取得し,さらにXAFS測定により堆積物中でのレアメタル元素の存在形態に関する情報を取得する.それらの結果から,推定される海洋の酸化還元状態や主要なレアメタルのホスト相・化学種などを制約条件に海洋から堆積物への元素沈積フラックスモデルの構築を進める.
令和5年度に予定していたSpring-8における分析旅費,英文校正・論文投稿費 (オープンアクセス費用含む) が使用されなかったため,次年度使用額が生じた.これらについては,それぞれ令和6年度に実施する予定である.
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Journal of Asian Earth Sciences: X
巻: 11 ページ: 100176~100176
10.1016/j.jaesx.2024.100176