本研究ではイオン液体の液滴形状を精緻に制御し、その形状変化に応じた光の透過・屈折・反射・共振機能の制御を行う微細な光素子の開発を目指した。不揮発性のイオン液体のうち、比較的表面張力が大きなイミダゾール塩を選び、フッ素化した微粒子を塗布した基板上へ滴下することで得られた液滴は、大気中でも1ヶ月以上にわたって安定で、その蒸発速度は顕微鏡や光学的な測定では検出できないほど抑えられていた。また、基板に強く吸着し、基板を垂直に立てたり振動させたりしても、落下や移動は生じない。 この液滴にレーザー色素を添加してレーザー光源としての機能を調べたところ、最も優れた有機マイクロ球体固体レーザーと同等のしきい値でレーザー発振することが明らかになった。液滴は極めて弱い力、例えばごく微量な空気の流れによって変形し、それに伴ってレーザー発振波長が変化する。この変化量は風速によって変化させることができる。また、風による液滴変形のシミュレーション、および変形した液滴内部における電磁場のシミュレーションから、風速による液滴変形の計算結果、および変形によるレーザー波長変化の計算結果が実験結果と符合することを明らかにした。さらに、同様の滴下方法をインクジェットプリンターで実現する手法を開発した。これにより、一定の大きさの液滴を、素早く大量に決まった位置に作製することができる。 この他にも、有機材料の柔軟性、および膨潤性を利用した光共振器・レーザー発振子、光センサーの開発を進め、論文発表に至っている。
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