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2022 年度 実施状況報告書

高速フォトクロミズムを利用した光生成らせん型ビラジカルの磁場依存性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K14659
研究機関大阪公立大学

研究代表者

武藤 克也  大阪公立大学, 大学院理学研究科, 講師 (10760605)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードフォトクロミズム / ビラジカル / キラル / ヘリセン
研究実績の概要

有機ビラジカルは、化学結合の形成や自然界における地磁気の認識に関わっているだけでなく、分子磁性材料を開発する上でも重要である。近年、磁場の向きとキラリティに依存してスピンの選択性を生み出す例として、らせんキラリティが注目されている。しかし、らせん型有機ビラジカルの電子スピン状態については詳細な報告例が無く、適切な分子設計指針は得られていない。本申請研究では、光照射によって可逆的にビラジカルを生成するフォトクロミック架橋型イミダゾール二量体に、らせん構造に由来するキラリティを持つヘリセンを架橋基として導入することで、光スイッチング機能を有するキラル有機ビラジカルの創生を目的とする。
実際に設計・合成した「ヘリセン架橋型イミダゾール二量体(helicene-ImD)」は、光学分割によりヘリセンのらせん方向に由来する光学異性体を単離することができた。各々の光学異性体に紫外光を照射するとC-N結合が解離し過渡種であるビラジカルが生成した。ビラジカルの生成はESR測定により確認された。また、ナノ秒レーザーフラッシュフォトリシスを用いた過渡吸収スペクトル測定より、ビラジカルは波長500 nmと800 nmに極大吸収を示し、吸光度時間減衰曲線よりビラジカルの半減期は298 Kにおいて29 msと求められた。これらより、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体は高速フォトクロミズムを示すことを明らかにし、高速フォトクロミズムを用いたキラル磁性スイッチの足掛かりとなる分子設計指針を確立することが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で目的とする「ヘリセン架橋型イミダゾール二量体(helicene-ImD)」を実際に合成し、ナノ秒レーザーフラッシュフォトリシスを用いた過渡吸収スペクトル測定より、高速フォトクロミック特性を明らかにすることが出来た。また、光照射により生成するビラジカルの存在をESR測定から確認した。これらより、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体は高速フォトクロミズムを示すことを明らかにし、高速フォトクロミズムを用いたキラル磁性スイッチの足掛かりとなる分子設計指針を確立することができたといえ、順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

[7]ヘリセンや[9]ヘリセン骨格により架橋されたイミダゾール二量体を設計、合成し、架橋基であるヘリセンのらせん構造と高速フォトクロミック特性の相関関係を明らかにする。また、ヘリセン架橋型イミダゾール二量体のエナンチオマーに対して、高速フォトクロミック特性や、ビラジカルの交換相互作用の磁場依存性を検討する。

次年度使用額が生じた理由

液体ヘリウム購入費を計上していたが、液体ヘリウムの国内供給量が大幅に減少し入手できなかったため、次年度使用額が生じた。
今年度では、合成に必要な試薬などの消耗品費として使用を計画している。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Acceleration of the thermal back-reaction and the finding of a non-photochromic isomer for a negative photochromic binaphthyl-bridged imidazole dimer2023

    • 著者名/発表者名
      Mutoh Katsuya、Moriyama Natsuho、Abe Jiro
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 59 ページ: 2962~2965

    • DOI

      10.1039/D2CC06942C

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Bridged-Imidazole Dimer Exhibiting Three-State Negative Photochromism with a Single Photochromic Unit2023

    • 著者名/発表者名
      Ito Hiroki、Mutoh Katsuya、Abe Jiro
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 145 ページ: 6498~6506

    • DOI

      10.1021/jacs.3c00476

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A photochromic carbazolyl-imidazolyl radical complex2022

    • 著者名/発表者名
      Kawanishi Yasuki、Segawa Yasutomo、Mutoh Katsuya、Abe Jiro、Kobayashi Yoichi
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 58 ページ: 4997~5000

    • DOI

      10.1039/D2CC01196D

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Excitation wavelength- and intensity-dependent stepwise two-photon-induced photochromic reaction2022

    • 著者名/発表者名
      Mutoh Katsuya、Yamamoto Katsuya、Abe Jiro
    • 雑誌名

      Photochemical & Photobiological Sciences

      巻: 21 ページ: 1445~1458

    • DOI

      10.1007/s43630-022-00234-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stepwise Photochromism of Bis(Imidazole Dimer) Bridged by a Sulfur Atom2022

    • 著者名/発表者名
      Mutoh Katsuya、Abe Jiro
    • 雑誌名

      Organic Letters

      巻: 24 ページ: 5166~5170

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.2c01998

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Controlling Diradical Character of Photogenerated Colored Isomers of Phenoxyl-Imidazolyl Radical Complexes2022

    • 著者名/発表者名
      Nishijima Moe、Mutoh Katsuya、Shimada Rintaro、Sakamoto Akira、Abe Jiro
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 144 ページ: 17186~17197

    • DOI

      10.1021/jacs.2c07562

    • 査読あり
  • [学会発表] ナフチルピレン架橋型イミダゾール二量体のマルチフォトクロミズム2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤 弘紀、武藤 克也、阿部 二朗
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] 環状ビスビナフチル架橋型フェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体の逆フォトクロミズム2022

    • 著者名/発表者名
      森山 夏帆、武藤 克也、阿部 二朗
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] ジフェニルジアセチレンで架橋した環状ビナフチル架橋型フェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体の逆フォトクロミズム2022

    • 著者名/発表者名
      小高 慧人、武藤 克也、阿部 二朗
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] ナフチルピレン架橋型イミダゾール二量体の逆フォトクロミズム2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤 弘紀,武藤 克也,阿部 二朗
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会2022
  • [学会発表] ビスフェノキシルーイミダゾリルラジカル複合体誘導体の結合解離過程2022

    • 著者名/発表者名
      瀬理 智哉,武藤 克也,阿部 二朗,小林 洋一
    • 学会等名
      第16回分子科学討論会2022
  • [学会発表] 可視光応答環状ビスビナフチル架橋型フェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体の開発2022

    • 著者名/発表者名
      森山夏帆、武藤克也、阿部二朗
    • 学会等名
      第12回CSJ化学フェスタ2022
  • [学会発表] Unveiling electronic structures of biradicaloids using fast switchable photochromism2022

    • 著者名/発表者名
      Katsuya Mutoh
    • 学会等名
      Mach-5
    • 招待講演
  • [学会発表] 高速フォトクロミズムによる段階的二光子誘起反応2022

    • 著者名/発表者名
      武藤克也
    • 学会等名
      第28回光科学若手研究会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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