本研究では、シュタウディンガー反応によるアザイリド(N=P)結合形成を通じて、古典的な系とは一線を画する新たなモノメリック型/ジェミニ型両親媒性分子の開発と性能評価を行うことである。ここでは主に1.広い疎水π面を有するモノメリック型両親媒性分子と、2.新奇ジェミニ型両親媒性分子のの合成と集合能評価を行った。具体的な成果は次の通りである。1に関して、本研究では両親媒性分子の疎水部を担う疎水性ホスフィンとして、トリナフチルホスフィンやト リビフェニルホスフィンを採用した。既存の親水性アジドは、対象とするホスフィン化合物とアザイリド(N=P)結合で連結されたが、得られた化合物は疎水性が高く水に難溶であった。そこで、新たに親水側鎖を2つもつ親水性アジドを合成し同様の操作を行った。その結果、得られた分子は水に溶け、水中で球状集合体を構築することが各種分析より明らかとなった。特筆すべき点は、両親媒性分子の疎水π面が広がった本分子は、先行研究の両親媒性分子より疎水性色素分子を効率よくミセル空間に取り込むことが判明した。2に関して、ビス(ジフェニルホスフィノ)アルカン(DPPA)を基盤としたジェミニ型両親媒性分子の合成を行った。DPPAは有機金属配位子として頻用されているが、本研究ではさまざまな炭素鎖リンカーをもつDPPA誘導体が市販されていることに着目し、これらの両親媒性分子化と集合能の検証を行った。炭素数が1-6のDPPAに親水性アジドを2:1の比率で混合したところ、狙い通り対応するジェミニ型両親媒性分子が定量的に得られた。得られた両親媒性分子の水中での集合構造を評価した結果、炭素鎖数によって両親媒性分子は球状集合体と層状の集合構造を形成することが判明した。さらに、球状集合体については、対応するモノメリック型両親媒性分子と比較して良好な分子内包能を示すことがわかった。
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