研究実績の概要 |
本研究では3 環以上が縮合した非交互炭化水素である縮合多環式非ベンゼン系炭化水素 (polycyclic nonbenzenoid hydrocarbons, PNH) の本質理解を目的として遂行した。その一つとして、反芳香族性に由来する興味深い性質をもつペンタレン骨格を中央にもつ PNH を標的分子とした。これまでにもベンゼンの縮環したペンタレンの合成法は多数報告されてきたものの、縮環構造を多様化するには適合しない合成経路であった。そこで、本研究では縮環部位を容易に多様化できるような合成法の確立に努めた。具体的には、2 つのケトン部位をもつビシクロ[3.3.0]オクタンを出発原料として、合成終盤に縮環し、酸化することでペンタレンへと誘導するという合成計画のもと、研究を遂行した。 始めに用いたジケトンは Weiss ジケトンという名でも知られるビシクロ[3.3.0]オクタン-3,7-ジオンである。このジケトンは対称性が高く、縮環に要する官能基の導入が難航したものの、対角に位置するケトンの α 位に 4 つのフェニルチオ基を導入できることを見出し、その構造的特徴と反応性を報告した。[Eur.J.Org.Chem.2022,e202201029.] Weiss ジケトンでは標的とした分子の合成が難しいと結論付け、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,6-ジオンを用い、再考した合成計画に基づき検討した。その結果、ベンゾチオフェンを始めとするヘテロ環の縮環したペンタレンを合成できた。[投稿準備中]
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