研究課題/領域番号 |
22K14672
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
辻 信弥 北海道大学, 化学反応創成研究拠点, 特任助教 (30873575)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有機触媒 / 不斉触媒 / ブレンステッド酸 / 炭化水素 |
研究実績の概要 |
遷移金属触媒によるアルケンの不斉異性化反応は産業的にも用いられる優れた反応だが、一般的に基質適用範囲として配位可能なヘテロ原子を必要とすることに加え、高価な希少金属を触媒として用いなければならないという問題があった。本研究ではキラルブレンステッド酸を有機分子触媒として用いることにより、ヘテロ原子を持たないアルケンの不斉異性化反応の開発を目指す。 本年度の研究としては、種々の基質および一連の不斉酸触媒を合成することで、基質、触媒、反応条件などについての詳細な検討を行った。その結果、シクロヘキサノン誘導体を基質として用いることで、良好な収率および中程度のエナンチオ選択性で反応が進行することを見出した。 また本反応の触媒最適化の検討を加速させるにあたって機械学習によるモデル構築が役立つと考え、その枠組みを構築することにも成功した。具体的にはIDPi触媒によるアルケンの活性化を伴う不斉ヒドロアルコキシ化反応を題材として、検討を行った。種々の検討の結果、環状炭化水素置換基を多く含む触媒構造に最適化したような分子記述子を開発することにより、これまでの二次元記述子を用いた予測モデルよりも優れた相関が得られた。また、本予測モデルを用いることで中程度の選択性のデータから高選択性の触媒の構造を予測することに成功した。また自動合成装置による検討を組み合わせることで、実験から機械学習モデル構築までをシームレスに接続した枠組みを構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、嵩高い酸触媒を用いることで1,1-2置換アルケンのみを選択的にプロトン化しつつ、生成物である3置換アルケンのプロトン化(ラセミ化)が抑制できることを見出した。また、触媒設計手法についてもアルケンの活性化を伴うヒドロアルコキシ化反応を例に、自動合成装置によるスクリーニングと組み合わせて枠組み構築を行うことに成功した。また、計算化学的手法を用いた反応機構解析についても進行中である。以上より、本研究課題は概ね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の研究については、構築したスクリーニングの枠組みを本反応系に適用し、条件検討を更に加速させる予定である。より幅広い基質や触媒についても更に合成を行い、網羅的な検討を行う予定である。また、それと並行して反応機構解析に基づいた反応・触媒分子の設計についても行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これから検討予定の基質について、そのエナンチオ選択性を決定するためには新しいキラルGCカラムが必要であるが、本年度の残額だけでは不足しているため。
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