研究実績の概要 |
本研究はキラル鉄(III)触媒を用いる不斉ラジカルカチオン[4+2]及び[2+2]環化付加反応の開発である。最終年度における3つの主な研究実績を以下に示す。なお、以下の実績に加えて、研究期間全体を通して得た成果を学術誌に掲載した(J. Am. Chem. Soc. 2023, 145, 15054-15060. DOI: 10.1021/jacs.3c04010)。
【1】基質適用範囲の拡大:前年度において最適化した反応条件を用いて基質適用範囲を検討した。その結果、本触媒システムは数々の官能基(ハロゲノ基、アルコキシ基、アシロキシ基、アセトキシカルボニル基、ホルミル基、ニトロ基、ナフチル基、フリル基、チオフェニル基)に対して許容性を示し、9種類の[4+2]環化付加体および22種類の[2+2]環化付加体を高収率かつ高不斉収率で与えた。 【2】光の照射効果の解明:前年度に発見した青色光の照射効果について、その詳細な機構を解明した。具体的には、UV-Vis測定によりキラル鉄(III)触媒の吸収波長が青色光の波長と重なることを明らかにし、Stern-Volmer解析により基質が消光剤として働くことを明らかにした。以上の結果を基に、キラル鉄(III)触媒が光レドックス触媒として働く機構を提唱した。 【3】キラル鉄(III)光レドックス触媒の構造解明:FeCl3とキラル銀ホスホロアミドからin situで調製可能なキラル鉄(III)触媒の生成の是非およびその構造を解明した。具体的には、ICP-AES解析によりFeCl3とキラル銀ホスホロアミドから所望のキラル鉄(III)触媒が生成することを定量的に評価した。続いて、計算科学を用いてキラル鉄(III)触媒のギブスエネルギーと最安定構造を導き出し、キラル鉄(III)触媒の生成を裏付けることに成功した。
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