ジスルフィド化合物は多彩な応用が期待される有用な化合物群であるが,非対称ジスルフィドの合成は難しく,これらを自在に合成できる手法の開発が求められてきた. これに対して本研究課題では,直交的に変換可能な置換基として,アミノ基とイミド基を有する新たなジスルフィドプラットフォーム分子を開発した.本試薬は簡便に合成することができ,酸(TFA)の存在下ではアミノ基のみが,非存在下ではイミド基のみが選択的に変換されることがわかった. 具体的には,酸の存在下で,アリル基,アリール基,アルキニル基を導入することに成功した.さらには,分子内に求核部位を有するアルキンやアルケンを用いることで,ベンゾヘテロール類や,環状ラクトン,環状エーテルなどを高い収率で合成することにも成功した. 一方で,残ったフタルイミド側にも様々な置換基を導入することに成功した.まず,アミノ酸をはじめとするアミノ基との反応が高い収率で進行することが明らかになった.また,アニリンを用いる場合には,LiBrを添加する条件で反応が進行することがわかった.加えて,アミノ酸等価体のアズラクトンの導入にも成功した.また,アズラクトンの導入後に求核剤を用いてアズラクトンを開環することで,ペプチド構造などを有するジスルフィドを簡便かつ効率的に合成することができた.加えて,Lewis Base触媒を用いる新たな活性化方式の反応の開拓にも成功した. 本手法は2つの脱離基を2段階でそれぞれ変換することが可能であり,両側に複雑な構造を有するジスルフィドを多様性合成することにも成功した.
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