研究実績の概要 |
金属有機構造体(Metal-Organic Framework, MOF)は金属イオンと架橋配位子の自己集合によって得られる多孔性物質である。MOFは、1) 細孔内への分子導入、2) 化学修飾による電子物性の制御、といった従来の電子材料にはない性質を持つ。MOFのデバイス応用に向けて、溶媒を使用しない物理蒸着法(PVD)による薄膜合成が望まれているが、PVDによるMOF薄膜合成は困難である。本研究は、ベイズ最適化を活用したPVDによるMOF薄膜合成を目的としている。R4年度は、1) 物理蒸着法による金属塩と有機配位子の交互積層、2) 溶媒蒸気雰囲気でのアニール処理という二段階の成膜プロセスにより、ガラス基板上に(111)配向したHKUST-1薄膜を合成することに成功した。R5年度は、HKUST-1と同様の二段階の成膜プロセスで、ピリジン蒸気アニールを行うことで、電気伝導性MOFであるCu3(HHTP)2 (HHTP = 2,3,6,7,10,11-hexahydroxytriphenylene)の配向膜合成に成功した。また、水と酢酸の混合溶媒を用いた蒸気アニールにより、熱的・化学的安定性の高いZr系MOFであるUiO-66の多結晶薄膜の合成にも成功した。以上より、開発した成膜手法により、多彩なMOF薄膜が合成可能であることを見出した。これまでに行ったMOF薄膜合成及びベイズ最適化のシミュレーションに関して、現在論文執筆を進めている状況である。
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