研究課題/領域番号 |
22K14696
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
三澤 智世 上智大学, 理工学部, 准教授 (30824726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高原子価二核錯体 / オキシド二重架橋構造 / 酸化反応 |
研究実績の概要 |
可溶性メタンモノオキシゲナーゼ(sMMO)の推定活性種Qの構造類似体の創製の観点から、酸素(オキシド)が2つのIV価ルテニウム(Ru(IV))間を架橋した一連の二核錯体の単離と系統的な物性評価を行っている。支持配位子としてピリジルアミン三座配位子ただ一種類を用いる。本年度はオキシド二重架橋({Ru(IV)-O2-Ru(IV)})コア上に酢酸イオンおよび硫酸イオンが架橋したRu(IV)-Ru(IV)二核錯体を単離した。リン酸イオンが架橋した錯体も生成を確認した。単結晶X線構造解析、電気化学的・分光学的に物性および反応性評価を行った。 酢酸イオン、硫酸イオンが架橋したRu(IV)-Ru(IV)二核錯体において、{Ru(IV)-O2-Ru(IV)}コアには電子スピンの寄与が残り、その構造パラメータは対応するRu(III)-Ru(IV)(実質Ru3.5-Ru3.5)二核錯体と比較してやや異なった。アセトニトリル中での電気化学測定の結果を既報のRu(IV)-Ru(IV)錯体を含めて比較すると、{Ru(IV)-O2-Ru(IV)}コア上の架橋配位子の電子供与性の高さは炭酸イオン > リン酸水素イオン > 硫酸イオン > 酢酸イオン、炭酸水素イオンの順であることがわかった。またその酸化還元電位は、近赤外領域における電子遷移スペクトルの波長とおおむね相関することも明らかにした。 酢酸イオン架橋錯体において、脱水アセトニトリル中での基質酸化反応にも着手し、今後基質の種類および他のRu(IV)-Ru(IV)錯体の反応との系統的な比較が必要な段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オキシド二重架橋コア上に、幾何、電荷、および静電的性質の異なる二座配位子を配位させることで物性の系統的評価を行い、その幅は格段に拡張した。一方で、オキシド一重架橋および二重架橋構造のRu(IV)-Ru(IV)二核錯体の単離には至らなかったことから総合的に進捗を評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に単離したオキシド二重架橋コア上に架橋配位子を有する二核錯体の電子構造の検討を継続するとともに、これらを用いた有機化合物の酸化反応も検討する。 オキシド一重架橋および二重架橋構造のRu(IV)-Ru(IV)二核錯体の単離に関して、一重架橋錯体に比べて二重架橋錯体の単離がより難しい状況が続いているため、研究計画の一部変更をおこない、前者の単離にフォーカスして検討を進める方針とする。
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