研究課題/領域番号 |
22K14700
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
鈴木 祐太 同志社大学, ハリス理化学研究所, 助教 (90906629)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 密度汎関数理論 / 高温溶液化学 / 溶融塩化物 / CCU / 脱炭素 / 炭素循環型社会 |
研究実績の概要 |
本研究は、二酸化炭素の資源化プロセスの一つとして、高温溶融塩中での電気化学反応を利用して二酸化炭素から機能性炭素材料および酸素を合成するプロセスの構築に必要な基礎的な物理化学的知見を得ることを目的としている。本提案プロセスを実現するために必要な電解システムの設計を行う上で、溶融塩中での二酸化炭素の溶解・還元挙動を明らかにする必要があるが、これまでの研究では電気化学的な計測に基づく情報のみが得られており、これら挙動を直接的に観察できていない。そこで、本研究では分光学的手法および計算化学的手法を組み合わせた測定法により高温溶融塩中での二酸化炭素の溶解・還元挙動をその場計測する。 令和4年度では、高温溶融塩中での二酸化炭素の溶解挙動を明らかにすることを目的に、二酸化炭素が溶解した溶融塩のその場ラマン分光計測を行い、得られたラマンスペクトルを密度汎関数理論に基づくコンピューターシミュレーションにより解析した。反応媒体となる溶融塩は、基礎的な熱力学データの豊富さおよび資源量の豊富さの観点からLiCl、NaCl、CaCl2を含む混合塩を用いた。 溶融塩化物中に二酸化炭素の溶解を促すことを目的として金属酸化物を添加した混合塩中でのラマン分光分析結果より、二酸化炭素導入後では新たなラマンバンドが検出され、密度汎関数計算によってカチオン種が配位した炭酸塩の状態で溶解していることが明かとなった。さらに、種々の溶融塩組成に対して同様の測定を行った結果から特にカルシウムイオンと二酸化炭素との相互作用が強い傾向が得られた。以上の通り、本年度の研究から得られた、溶融塩の構成元素と二酸化炭素との相互作用に関する知見を電解プロセスに適した溶融塩浴の設計に応用し、今後は二酸化炭素還元過程を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、高温溶融塩中での二酸化炭素の溶解挙動を明らかにすることができた。溶融塩の組成は実用性の観点から溶融塩化物に限定されたが、溶融塩化物中での二酸化炭素の溶解挙動をその場計測できたことは大きな成果である。また、量子化学計算結果も分光計測結果に対してよい一致を示しており、本提案手法が当初の研究目的を達成する上で有効であることが判った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高温溶融塩に溶解した二酸化炭素が溶融塩/電極界面でどのようなプロセスを経て還元されるかについて、当初の予定通り、電気化学計測・分光計測・量子化学計算を用いた実験により検討を行う。相補的な計測を行い、得られた知見に基づき、電極界面での二酸化炭素の還元プロセスの解析手法の確立を目指す。さらに、二酸化炭素の資源化に適した電解システムの提案に繋げる。
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備考 |
受賞「優秀講演賞」一般社団法人日本原子力学会 新型炉部会、鈴木祐太
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