研究課題/領域番号 |
22K14716
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
奥野 義規 横浜薬科大学, 薬学部, 准教授 (90449405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 固定化触媒 / フロー反応 / グリーンケミストリー / 不斉触媒 / プロリン / グラフト重合 / 多機能高分子 |
研究実績の概要 |
放射線二段グラフト重合法を用いて異なる機能を有する触媒高分子と補助触媒(基質認識)高分子を別々に接ぎ木(グラフト重合)し、複雑な反応を単一高分子上で実施できる次世代の多機能固定化型高分子触媒の研究を進めている。 計画段階では、a) 複数の触媒担持による多段階反応を実現できる触媒―補助触媒のような、多機能高分子の開発、b) 触媒-反応条件を同一高分子上へグラフト固定化した多機能高分子の開発を目標としており、初年度はa)の高分子研究を実施した。
・アミノ酸触媒によるグラフト型酸性高分子の構築と不斉触媒的フロー反応 プロリンやその骨格であるピロリジンを用いたアルドール反応では、触媒量の酢酸を加えることで、反応中間体であるエナミンの形成を促進する。そこで、放射線二段グラフト重合でプロリン誘導体とアクリル酸を重合した多機能高分子触媒の研究開発を進めてきた。この際、アクリル酸の重合度を調節し、様々な高分子でプロリン触媒とカルボン酸における不斉アルドール反応における、触媒促進の相互作用を調査した。すると、高重合度のポリアクリル酸グラフトの場合(官能基量比率、Cat:COOH=1:40)、プロリン触媒の反応を抑制する結果となった。また、プロリン触媒高分子のみをグラフト重合した場合(官能基量比率、Cat:COOH=1:0)、良好な結果は得られなかった。適切なポリアクリル酸の量を重合した場合(官能基量比率、Cat:COOH=1:3)、最も良好な収率、立体選択性の結果となった。 以上のことから、放射線二段グラフト重合法において、触媒量や補助触媒の重合制御が可能であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の放射線二段グラフト重合法は、一段目のグラフト重合で高分子の極性を変化させ、二段目で重合が困難なモノマーの重合率を向上させるために行われるのが一般的である。しかし、この研究においては、二段グラフト重合法の新展開となり、新しい多機能固定化高分子触媒の開発を期待した。 今回実施した放射線二段グラフト重合法において、グラフト重合の制御や、それぞれのグラフト鎖高分子部位同士の相互作用が確認された。 以上のことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、放射線二段グラフト重合法をもちいて、その適応範囲を調査する。 そのため、塩基性環境、不斉環境の高分子を設計し、多様な機能グラフト鎖を合成し、それぞれが相互作用する多機能高分子の合成に着手する。 まず初めに、不斉環境の高分子合成を視野にいれて研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、高分子合成を中心に研究しており、フロー反応への応用まで到達していないため、支出が低くなっている。次年度、フロー反応に必要な機器などの購入を考えている。
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