研究課題/領域番号 |
22K14726
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
KIM HYUNGDO 京都大学, 工学研究科, 助教 (80837899)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 全高分子太陽電池 / 光捕集効率 / 電荷回収効率 / 二分子再結合 / 電荷移動度 / 曲線因子 / 過度光起電力/光電流測定 / 電荷回収測定 |
研究実績の概要 |
電子ドナー性ポリマーと電子アクセプター性性ポリマーからなる全高分子ブレンド太陽電池は、実用化のために、さらなるエネルギー変換効率の向上が求められる。そのために、光活性層を厚膜することで光捕集効率を増加させ、短絡電流密度(JSC)を向上させる必要がある。しかし、全高分子ブレンド太陽電池ではJSCとFFの間にトレードオフ関係が存在することが知られており、厚膜状態でも高いFFを維持することが、高効率な素子の実現にあたって最も重要である。 そこで本研究では、電子ドナー材料として側鎖の異なる結晶性共役高分子を用いた全高分子ブレンド太陽電池について曲線因子の膜厚依存性が異なる原因を電荷回収ならびに電荷再結合ダイナミクスの観点から包括的に検討を行った。まず、過度光起電力/光電流測定を行い、二分子再結合の抑制因子(ζ)を評価したところ、本研究で使用されたブレンド膜はいずれも二分子再結合が抑えられていることが分かった。さらに、二分子再結合がFFへ及ぼす影響を検討するため、電荷回収(CE)測定の結果を用いた解析によりJ-V曲線を再現を行った。その結果、厚膜化によるFFの低下がわずかで素子では、実測曲線と解析曲線の間には良好な一致が見られ、二分子再結合がFF低下の主な要因となることが分かった。これに対して、厚膜化に伴い顕著なFFの低下が見られる素子では解析曲線が実測曲線よりずれており、CE測定から得た電荷密度に一定値の電荷密度を加えることで再現することができた。つまり、これらの素子においてはCE測定では観測できない孤立電荷との再結合によりFFが低下していると考えられる。 最後に、高いFFの実現の鍵となる要因を検討するために電荷寿命と電荷回収の定量議論を行った結果、厚膜でも高いFFを維持する素子では輸送過程での損失が無視できることが分かった。これは二分子再結合の抑制とともに高い電荷移動度に起因していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ研究計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、相分離構造とD/A界面におけるエネルギー構造に関する議論を行う。ブレンド膜における結晶性や配向は、素子作製中の熱処理によって変化するため、アニール温度を変えてX線回折法により定量分析する。また、単膜とブレンド膜において、正孔のみを輸送するサンプルを作製し、In-situ 電流モード原子間力顕微鏡を測定することで、混合相の厚さを定量評価する。また、D/A界面における混合相の状態は、用いるポリマーの相溶性によって大きく異なるため、示差走査熱量測定法により結晶化温度と融点を測定することで、三相図(溶媒、ドナー相、そしてアクセプター相)を作成し、相溶性の観点から相分離構造を議論する。さらに、D/A界面におけるエネルギー構造は、用いるポリマーの結晶性によって異なる。そのため、薄膜状態におけるサイクリックボルタンメトリー測定により、D/A界面におけるエネルギー構造を各サンプルに対して明確にする。その結果をもとに全高分子ブレンド太陽電池における二分子再結合の支配要因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により共同研究や学会発表などの活動が制限されたため、計画通り予算を使用出来ず次年度使用額が生じることになった。今年度は昨年度実施できなかったX線回折によるモルフォロジーの定量評価を行う予定である。また、国際学会に積極的に参加し、得られた研究成果を発表する予定である。それに伴う物品費と旅費が発生すると想定される。
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