研究課題/領域番号 |
22K14728
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長尾 匡憲 九州大学, 工学研究院, 助教 (40904008)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環状高分子 / 糖鎖 / 生体分子間相互作用 / クリック反応 / 環化反応 / ガラス転移温度 / 緩和時間 |
研究実績の概要 |
2022年度においては、まずリビングラジカル重合の一種であるRAFT重合を用いることで糖鎖をもつ環状高分子の合成を達成した。具体的には線形の高分子を重合したのち、その末端同士を結合させる末端環化法により作製した。親水性のジメチルアクリルアミドおよびガラクトース糖鎖をもつモノマーを、アジド基を有するRAFT剤を使用して共重合させた。量体数は50程度とした。そののち、トリチオカルボナート末端に対してアルキンを修飾した。銅触媒によるアジド-アルキンのクリック反応により、末端同士を閉環した。希釈条件で実施したものの、反応後に多量体不純物の存在が確認された。可能な限りこの不純物の存在比率を抑えるべく溶媒や温度の検討を実施したが、常に不純物が40%程度存在する結果となった。そこでリサイクル型のサイズ排除クロマトグラフィーを導入し、不純物を除去した。純度の高い機能性環状高分子が得られ、その物性を示差走査熱量系やNMRの緩和時間により評価した。環化することで高分子は高いガラス転移温度や短い緩和時間を示した。これらより、機能性の官能基を側鎖にもつ環状高分子の精密な合成を達成し、意図した通りその分子運動性を制御できた。 現在は標的であるコレラ毒素タンパク質との相互作用を評価している段階である。相互作用の等温滴定型カロリメトリーの使用を当初は検討していたが、コレラ毒素タンパク質の入手可能量に限度があったため、より少ない量で実験可能なELISA測定に切り替えることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた、糖鎖をもつ環状高分子の合成およびその物性評価を達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
等温滴定型カロリメトリーに基づく相互作用評価ではなく、ELISA法による評価に切り替え、環状高分子の分子量が標的である生体分子との相互作用に与える影響を評価する。
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