研究課題/領域番号 |
22K14732
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡 弘樹 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (50907376)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機能性有機材料 / 電荷貯蔵 / 持続可能性 |
研究実績の概要 |
1. 可逆なレドックス能を有する有機多孔質材料の創出とデバイスへの展開 有機レドックス分子の一種であるアントラキノンを構成要素とする有機多孔質材料を新規に合成した。同多孔質材料自体は導電性を持たないため、その空孔内で導電性高分子を重合することで導電性を付与した。同材料は、酸性水電解液中で負極材料としてほぼ理論容量通りで動作した。同材料を負極として使用し、高い出力・耐久性をもつ有機空気二次電池をはじめて実証した(J. Mater. Chem. A 2023、Hot paperに選出)。なお、本成果の一部は、スウェーデン・ウプサラ大との共同研究によるものである。
2. 電荷貯蔵能と温和な分解能の双方を併せ持つ有機・高分子レドックス材料の創製 有機レドックス分子の一種であるビオロゲン誘導体が、電解質水溶液中にて可逆に酸化還元可能で、生体分子を原料として調製可能である4,4’-ビピリジンから環境適合な簡便に合成できることを見出した。さらに、同ビオロゲン誘導体が温和な低温熱処理(~200℃)で分解、80%以上の高収率で原料である4,4’-ビピリジンを再生することも見出した。以上から、電荷貯蔵能と温和な分解能の双方を併せ持つ有機・高分子レドックス材料の創製に成功した。これらの成果をまとめた論文を、現在、国際科学誌に投稿・修正中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究は計画通りに進捗しており、令和四年度の特筆すべき研究成果は、① 有機多孔質材料が酸型空気電池の負極材料として働くことを着想し、レドックス特性およびサイクル特性に優れた有機空気二次電池をはじめて実証した点、② 電荷貯蔵能と温和な分解能の双方を併せ持つ有機・高分子レドックス材料の創製した点、にあり、成果として当初に期待した以上の進展に繋がっている。 論文発表9報も順調で、表紙(The Journal of Physical Chemistry Letters誌、Angewandte Chemie International Edition誌)への掲載など,研究内容の効果的なアピールにも尽力している。また、連名含む国内学会8件、海外国際会議1件にて研究発表し、国内学会・残団での研究奨励賞3件、国際会議での受賞1件、教育機関からの感謝状1件など対外的に高い評価を受けている。 以上より、研究進捗状況は、当初の期待以上であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
令和五年度では、①電荷貯蔵能と温和な分解の相関解明、②リサイクル可能な有機・高分子機能材料と革新的エネルギーデバイスの創製に取り組みたい。 ①については、これまでの研究で明らかにした温和な分解を可能とする分子要件をもとに、高いレドックス能をもつ分子・高分子・構造体を新たに合成する。分解反応に係る物性(熱耐性・酸耐性など)をさらに詳細に明らかにするとともに、これら種種の分解性を有する材料の電荷貯蔵能を解明する。以上から、電荷貯蔵能に影響を与える因子(熱耐性・pH・分解塩濃度など)を明らかにし、分解との相関について定量的な解明を目指す。 ②については、これまでの研究成果を基に、分子設計、分解条件を最適化することで、例えば100回以上リサイクル可能な電極活物質を創製する。また、これらの電極活物質を用いた、リサイクルの容易な有機二次電池など、革新的な有機デバイスも検討する。 スウェーデン・ウプサラ大とも共同し、高いレドックス能と温和な分解能を両立した有機多孔質材料の創製に引き続き取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関の異動に伴い、研究実施環境に大きく変化が生じた。 このため購入予定物品類を見直し、また所属機関所有の実験消耗品を使用できたため令和四年度は未使用額が生じた。この未使用額は次年度予算と合わせて熱分析装置の購入に充て、本研究の目標達成に向かい、研究を加速させる予定である。
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