研究実績の概要 |
有機固体は発光特性や半導体特性、力学特性など多様な機能性をもつ材料群であるが、物性と構造が紐づいたデータベースは非常に限られており、有機固体を対象にしたマテリアルズインフォマティクス(MI)は困難であった。また、有機固体材料における機械学習の活用は無機材料ほど進んでおらず、機械学習の活用と検証を進めていくことが重要である。 OMDBのデータセットを用いてバンドギャップの回帰において分子グラフと結晶グラフの数理表現を比較した。その結果、結晶グラフの方が予測精度が高いことを見出した。また、2つのグラフ表現の比較から、分子構造がバンドギャップに与える影響と分子間相互作用がバンドギャップに与える影響を定量的に評価できた(T. Taniguchi et al., ACS Omega, 2023)。次に、構造相転移データについては学術論文から分子構造、結晶構造、転移温度・エンタルピーをまとめることでデータセットを構築した。構造相転移では分類問題として扱い、Positive-Unlabeled学習を行った。これによりUnlabeledデータセットの中に含まれるPositiveの可能性が高い分子を抽出することができ、文献および実験により本スクリーニングが有効であることを見出した(D. Takagi et al., Digital Discovery, 2023)。さらに、有機固体の弾性率予測における汎用機械学習ポテンシャルの有効性を検証した。Matlantisで提供されているPFPが他の汎用ポテンシャル(CHGNet)よりも精度がよく、DFT計算に匹敵する予測精度であることが明らかになった(T. Taniguchi, CrystEngComm, 2024)。また、得られた研究成果は学術論文だけでなく、日本結晶学会や日本化学会春季年会などでも学会発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において複数の学術論文を発表できている。OMDBのデータセットを用いてバンドギャップの回帰において分子グラフと結晶グラフの数理表現を比較した結果、結晶グラフの方が予測精度が高いことを見出した。また、2つのグラフ表現の比較から、分子構造がバンドギャップに与える影響と分子間相互作用がバンドギャップに与える影響を定量的に評価できた(T. Taniguchi et al., ACS Omega, 2023)。次に、構造相転移データについては学術論文から分子構造、結晶構造、転移温度・エンタルピーをまとめることでデータセットを構築した。構造相転移では分類問題として扱い、Positive-Unlabeled学習を行った。これによりUnlabeledデータセットの中に含まれるPositiveの可能性が高い分子を抽出することができ、文献および実験により本スクリーニングが有効であることを見出した(D. Takagi et al., Digital Discovery, 2023)。さらに、有機固体の弾性率予測における汎用機械学習ポテンシャルの有効性を検証した。Matlantisで提供されているPFPが他の汎用ポテンシャルCHGNetよりも精度がよく、DFT計算に匹敵する予測精度であることが明らかになった(T. Taniguchi, CrystEngComm, 2024)。 その他にも、分子構造が似た2つの化合物のキラル結晶とラセミ結晶の構造類似度を調べ、ヤング率と構造の関係を明らかにした(K. Ishizaki et al., Cryst. Growth. Des., 2023)。また、有機無機ペロブスカイト太陽電池に機械学習を適用した分析を行い論文発表した(R. Fukasawa et al, Energy Advances, 2024)。
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