研究実績の概要 |
これまでに研究代表者は、平面型配位子を有する鉄錯体Fe(bpc)(H2bpc = 4,5-dichloro-1,2-bis-(pyridine-2-carboximido)benzene)を合成し、Fe(bpc)が有機溶媒中において電気化学的な二酸化炭素還元触媒として機能することを見出した。さらに、Fe(bpc)修飾電極が水溶液中において低過電圧で高効率かつ高選択的に二酸化炭素を一酸化炭素へと変換する分子性触媒電極として働くことを明らかにした。 本研究課題では、上記の結果を基盤として、水中において低過電圧でかつ高選択的に低濃度の二酸化炭素を還元して有用炭素資源を製造可能な鉄錯体触媒系の創製を目指して研究を行い、以下の成果を得た。 Fe(bpc)がDMF中で1%の低二酸化炭素濃度でも高効率に二酸化炭素を還元し、一酸化炭素を生成することを見出した。電気化学測定と量子化学計算から、Fe(bpc)の還元種と二酸化炭素の結合定数が極めて大きいことを明らかにした。この結果は、Fe(bpc)が軸配位サイトに二酸化炭素を効果的に取り込む能力を有することを示している。 Fe(bpc)に電子供与性の異なる種々の置換基を導入したFe錯体群や金属中心をニッケルに置き換えたNi(bpc)を合成し、触媒性能を評価した。Fe(bpc)の二つのピリジン部位に電子吸引性であるフルオロ基を導入した新規錯体(Fe(fbpc))を触媒として、水とフェノールをプロトン源とした二酸化炭素飽和DMF溶液中の電解実験を実施した結果、一酸化炭素と水素に加えて微量のメタンが生成することを明らかにした。 現在、水中における低濃度二酸化炭素還元を促進するFe錯体修飾電極の作製と性能評価を進めている。
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