本研究では、有用生成物を得る還元反応と水の酸化反応を相分離したそれぞれ異なる溶媒で進行させることで反応場を分離した新しい光触媒システムを構築し、 水を電子源とした人工光合成反応を高効率化することを目的としている。天然の光合成のZ-スキーム機構でも採用されている異相界面を行き来する高効率電子伝 達を人工系にフィードバックし、電子移動と連動して液-液相界面を縦断する電子輸送系を開発することで酸化・還元反応場の分離が可能であると考えられる。 これにより、従来の単一溶液系において光触媒効率を低下させる要因となる逆電子移動過程を大幅に抑制し、人工光合成反応の飛躍的な高効率化が期待できる。 そこで、相間移動に共役した光電子伝達の学理を確立することで、有用な還元反応を伴う光エネルギー変換反応の高効率化に幅広く適用できるプラットホーム構 築に向けて研究を遂行した。研究期間内に、相間移動型電子メディエーターを用いた有機相における還元的カップリング反応、および水相にお ける光触媒的水の酸化反応を実証した。適切な光触媒を用いることで、還元反応では電子を供与したメディエーターが水相へ移動し水の酸化に必要な電子受容を行い、再び有機相へと移動する相間移動型電子メディエーターとして機能することを見出した。さらに、これら酸化還元反応を相間移動型電子メディエーターにより連結し、二相溶液中における水を電子源とした還元的光レドックス反応の実証にも成功した。
|