本研究では、深共晶水和物等の水を含有する電解液におけるアルミニウム析出溶解反応の制限因子を明らかにすることを主要な目標とする。そこで2022年度はモデル系として、過去にアルミニウムの析出溶解が報告されている溶媒和イオン液体に水を添加した電解液を用いて、異なる量の水を含有する電解液中におけるアルミニウム析出溶解挙動を系統的に調査した。 電気化学測定より、数千ppmから数%の水を含む電解液中では、アルミニウムの析出反応は部分的に進行するものの、析出したアルミニウムが時間経過と共に不動態化することで更なる析出反応および溶解反応を妨げていることが明らかになった。さらに、析出物を解析した結果、不動態被膜は主にアルミニウム酸化物で構成されており、当初想定されていた電解液の還元分解物との副反応だけでなく、電解液中の溶存酸素や測定セル内で酸化分解した水に由来する酸素との副反応が不動態化の原因となっている可能性が示唆された。 上述の結果から、部分的に水が含まれる系においてもアルミニウムの電析反応そのものは進行することが示唆され、高効率かつ可逆的な溶解析出反応を実現するためには、電析後のアルミニウム表面の不働態化を防ぐことが重要であることが明らかになった。すなわち、電解液の熱力学的な電位窓を拡大することが出来れば、アルミニウムの可逆的な溶解析出反応およびアルミニウム金属二次電池の可逆作動の実現されると期待される。 これらの成果は、2022年の電気化学秋季大会にて口頭発表した。
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