研究課題/領域番号 |
22K14778
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古畑 隆史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (50882635)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ユビキチン / 分岐鎖 / プロテアソーム / ワンポット合成 |
研究実績の概要 |
近年、タンパク質品質管理機構における不均一ユビキチン鎖の果たす役割が注目されている。特に、K48鎖とK11、 K29、K63鎖を併せ持つ不均一鎖は、ユビキチン-プロテアソーム系において従来分解誘導因子として考えられてきたK48均一鎖よりも強い誘導能を発揮しうることが示されている。しかし、いかなる構造因子が分岐鎖の強い分解誘導能を実現しているのかという、化学レベルの分子メカニズムは未だ解明されいない。これは、厳密に構造を規定した分岐鎖群を効率的に構築し、分解の素過程における構造機能相関の抽出を可能とする系統的評価系が実現されていないためである。以上の背景から、本研究では光誘起型ワンポット連結反応による分岐ポリユビキチン鎖群の創出を目指す。また、各種ユビキチン鎖を付与した基質タンパク質のプロテアソームによる分解速度を比較し、分岐鎖による分解の効率的な誘導を可能とする分子メカニズムの解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究当初は、初年度において光誘起型の段階的伸長反応を開発し、異なる分岐構造を有するユビキチン鎖群の構築を行う予定であった。本年度は、実際にユビキチン連結酵素を用いたK63K48不均一鎖のワンポット合成を実現し、分岐位置の異なる3種のユビキチン鎖の構築を行った。さらに、質量分析による相互作用解析により、ユビキチンープロテアソーム系においてユビキチン化基質のプロテアソームへの運搬を担うシャトル因子との相互作用が、分岐構造により変化することを見出した。プロテアソームによる分解経路の重要な素過程の一つに関して、分岐構造が与える影響を評価できた点で、当初の計画以上に研究が進展していると言える。さらに、より効率的かつ生体内で安定なユビキチン鎖の構築に向け、生体直行性反応を用いたユビキチン鎖の連結と不均一鎖の構築に関する予備検討を行い、数時間以内に反応が完了することを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、不均一鎖の構造制御合成を実現し、それを認識するシャトル因子を明らかにした。今後は、分岐鎖が均一鎖に比べて高い分解誘導能を有する分子メカニズムを系統的に明らかにするため、光誘起型生体直行性反応を用いた不均一ユビキチン鎖ライブラリの拡張を行う。さらに、プロテアソーム分解およびシャトル因子との相互作用について、均一鎖との比較を試験管内で行い、各過程を加速する不均一鎖構造の抽出を目指す。加えて、細胞抽出液や細胞内など実際の生体に近い環境において、構造を規定したユビキチン鎖を修飾した基質タンパク質の分解挙動を評価し、試験管内と細胞内で一貫して分解を促進する構造因子の抽出を目指す。
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