研究課題/領域番号 |
22K14795
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神保 晴彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (50835965)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光合成 / メタボロン / ケミカルバイオロジー / シアノバクテリア / 代謝工学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、チラコイド膜上のメタボロンを網羅的に解析することで、高速なPSII修復における包括的な分子機構を明らかにする。本年度は、シアノバクテリアの膜脂質を構成するモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)の代謝回転に関わるリパーゼ遺伝子LipAの変異株について解析を行い、PSII修復における役割を明らかにした。この成果を日本光合成学会、日本植物学会および国際光合成学会などの国際学術会議で口頭発表した。また、成果を国際学術専門雑誌に発表した(Jimbo et al. 2023 Plant Physiology)。本成果は、本研究課題においてPSII修復に関わる酵素群を同定する上で重要な知見であり、今後の研究の推進に活かすことができる。 また、タンパク質の脂質修飾に関わる遺伝子欠損株における光合成活性についても解析した。リポタンパク質のN末端側に脂肪酸を転移する酵素であるLipoprotein-N-acyltransferase (lnt)を欠損した変異株について光合成活性などを解析したところ、光合成活性が野生株に比べて半分程度にまで低下していることが明らかとなった。さらに、膜上メタボロン酵素群の同定に必要な条件を検討し、添加する脂質プローブ量および培養条件、また、クリック反応について最適な条件を見出した。これらの研究成果は、翌年度に計画しているチラコイド膜上メタボロンの包括的解明およびこれらの知見に基づいた人工的な膜上メタボロン形成技術の開発に必須であることから、研究は概ね順調に進行していると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、光化学系II(PSII)の修復に関わるチラコイド膜上メタボロンの全体を明らかにする。今年度は、PSII修復に関わるリパーゼ遺伝子を同定したことで、チラコイド膜上メタボロン形成に関わると考えられる反応の一端を明らかにすることができた。本成果において、リパーゼはPSII二量体に特異的に局在していたことから、PSII修復に関わるチラコイド膜上メタボロンについても、PSII複合体の高次構造に応じて複合体が異なることが示唆された。 また、シアノバクテリアにおいて脂質修飾されるタンパク質群について遺伝子欠損変異株を作製し、光合成活性への影響を解析した。その結果、本研究で対象とした脂質修飾タンパク質の欠損株では、光合成活性に大きな影響は見られなかった。そこで、タンパク質のN末端に脂肪酸を付加する酵素である、Lipoprotein-N-acyltransferase (lnt)を欠損した変異株を作製し、光合成への影響を解析した。その結果、lnt変異株においては、光合成活性が低下していた。したがって、タンパク質の脂質修飾は、光合成活性を向上させるために必須であると考えられる。さらに本年度は、膜上メタボロン酵素群の同定に必要な条件を検討し、添加する脂質プローブ量および培養条件、また、クリック反応について最適な条件を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、最適化された条件において、膜上メタボロンの同定を行う予定である。また、国内外においてPSII修復に関わるクロロフィル代謝酵素が報告されており(Takatani et al. 2022 Plant Cell Physiol., Chen et al., 2021 PNAS)、これらの遺伝子についてもリパーゼと同様にチラコイド膜上メタボロンに含まれている可能性がある。したがって、クロロフィル代謝酵素についても欠損株を作製し、PSII修復におけるクロロフィル代謝の役割を明らかにする。また、脂質修飾タンパク質による光合成活性への寄与を明らかにしたことから、今後は、azido-palmitic acidを用いたケミカルバイオロジー的手法に基づいて、シアノバクテリアにおける脂質修飾タンパク質を網羅的に明らかにする。これらの研究の知見を、人工的な膜上メタボロン形成技術の開発に活かす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、本年度にチラコイド膜上メタボロンを同定するために、多くのプロテオーム解析(受託解析)を行う予定であったが、脂質プローブを細胞に添加し、培養する条件やクリック反応の条件を最適化する必要があり、プロテオーム解析は翌年度に繰越した。そのため、本年度使用額を次年度に使用する必要がある。
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