イネはアンモニウムを好んで利用するため、効率的なアンモニウム利用機構を有すると考えられる。しかし、イネ独自のアンモニウム利用の分子機構はこれまで見出されていない。申請者は、3種類のアンモニウム輸送体 (AMT1) が、外皮細胞の遠心側へ偏在し、アンモニウムに応じて小胞体に蓄積するというイネに特有の現象を発見した。これらの現象は、イネの効率的なアンモニウム利用に貢献している可能性があるが、その生理的意義は分かっていない。 昨年度、AMT1;2のC末端領域にある8か所のセリン/スレオニン/チロシン残基をリン酸化されうる残基として、リン酸化模倣または脱リン酸化模倣した変異型AMT1;2をamt1 三重変異体に導入した。シロイヌナズナホウ酸輸送体AtNIP5;1では細胞質領域のリン酸化が偏在形成に必要であるが、いずれの変異型AMT1;2も野生型AMT1;2と同様の偏在性と小胞体蓄積性を示したことから、C末端領域のリン酸化状態はAMT1;2の細胞内局在に影響しないことが分かった。一方、すでに知られている保存されたスレオニン残基のリン酸化がAMT1;2の活性を負に制御するのに加え、保存されていないセリン残基のリン酸化がAMT1;2の活性化に必要なことが分かった。 さらに、偏在性と小胞体蓄積性の制御メカニズムを明らかにするため、AMT1;1のC末端領域を様々にデリーションした変異型AMT1;1をamt1 三重変異体に導入し、細胞内局在を評価した。AMT1;1のC末端の膜ドメインから7アミノ酸の領域に変異を加えるとAMT1;1が小胞体に蓄積することが分かったが、この領域以外をデリーションしても偏在性と小胞体蓄積性に影響しないことが分かった。この結果は、C末端の7アミノ酸の領域に小胞体蓄積性を制御する領域があること示したが、偏在性を作り出す領域を見出すことはできなかった。
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