研究実績の概要 |
石油分解土壌細菌コンソーシアムから単離された多環芳香族炭化水素(PAH)分解細菌Sphingobium barthaii KK22株を対象とした培養試験により、同細菌株がアルキル基が結合したPAH(鎖状アルキル化PAH, CA-PAH)のモデル化合物である1-ethylnaphthaleneを分解する能力を持つことを明らかにした(Sakai et al., Int. Biodeter. Biodegr., 2022)。得られた知見より、石油分解コンソーシアムにおけるPAH分解パイオニア微生物であるSphingobium属と、長鎖アルカンを分解する別の細菌種が共存することで、石油中に豊富に存在するより複雑なCA-PAHの分解を先導しているという新たな仮説を提唱した(投稿準備中 / 日本微生物生態学会 第35回大会 口頭発表)。 また、KK22株と共に土壌細菌コンソーシアムから単離された単環芳香族を分解する「脇役」細菌種について、これとKK22株との共培養試験を行ったところ、KK22株の代謝産物がこの細菌の増殖を促進する現象を見出した(投稿準備中)。 さらに、沿岸海水を用いて新たにPAH分解海洋細菌コンソーシアムの集積培養を行い、選抜された細菌叢をアンプリコンシーケンス解析により明らかにした。コンソーシアム中で優占していた細菌属のうち、単環芳香族分解能を持つThalassospira属細菌を新たに単離し、その完全ゲノムの解読に成功した(Kayama et al., Microbiol. Resour. Announc., 2022)。また、得られたゲノム情報と既知のThalassospira属細菌株との詳細な比較ゲノム解析を行い、PAH暴露環境における同細菌属の生態学的役割について明らかにした(Kayama et al., Microbiol. Spectr., 2022)。
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