• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

きのこ類における非飢餓シグナリングを介した生殖成長ブロック機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K14819
研究機関公益財団法人岩手生物工学研究センター

研究代表者

吉田 裕史  公益財団法人岩手生物工学研究センター, 生物資源研究部, 研究員 (70879709)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード発茸抑制 / グルコース / ウシグソヒトヨタケ
研究実績の概要

高グルコース下では発茸が抑制され,光等の刺激を与えても子実体形成は通常起こらない。しかし,ラパマイシンを添加した高グルコース培地においては発茸が可能となることから,高グルコース下での発茸抑制にはTORが介在することが示唆された。そこで,TOR下で負に制御される経路のうち,オートファジーの働きが発茸に必要であるという仮説のもと,オートファジーの発茸への関与について検証を行った。オートファジー全般に関与し得る因子群の遺伝子を破壊したところ,生育が幾分遅くなると同時に発茸が著しく抑制された。また,マクロオートファジー関連因子としてAtg13,ミクロオートファジー関連因子としてVps27を破壊したところ,いずれも高栄養の培地において野生型株並の生育を示しつつ,前者の破壊では発茸への大きな影響が生じず,後者の破壊によって発茸が顕著に抑制された。さらに,Vps27のTORC依存的リン酸化部位を推定し,これをアラニンに置換した「非リン酸化型」Vps27を発現させたところ,高グルコース下でも発茸初期反応が生じるという結果が得られ,同残基のリン酸化が発茸抑制の一端を担うことが示唆された。

また,高グルコース下でも発茸が抑制されない突然変異体が複数得られており,そのうち1株について,後代の遺伝子多型解析によって原因候補遺伝子を一つに絞り込み,同遺伝子のノックアウトによって高グルコース下で発茸するという表現型が再現されることをもって原因遺伝子の同定に至った。同定された原因遺伝子は糖の輸送あるいはセンシングに関与する膜タンパク質をコードすると予測された。興味深いことに,同遺伝子を欠損した株は高グルコース下での発茸抑制が恒常的に解除された状態でありながら,菌糸体栄養成長の面でのトレードオフを示さず,むしろ野生型株に比べて顕著に早い生育を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

発茸抑制経路の一端として,TORを介したVps27経路の抑制が高グルコース下での発茸抑制に部分的に関与することを明らかにした。また,糖の輸送ないしセンシングのメカニズムに欠損を生じることで,発茸抑制を恒常的に解除できることを明らかにした。前者は,発茸抑制因子の除去にミクロオートファジーが部分的に関与することを示唆する重要な知見であると考える。また,後者は,発茸抑制の解除と旺盛な栄養成長を両立できることを示した点で有用な成果であると考える。
一方,これまでのところ発茸抑制因子の特定には至っていないため,これを特定することが今後の課題である。

今後の研究の推進方策

昨年度までの研究では,発茸抑制の経路の一端が明らかになったが,発茸抑制因子の特定には至らなかった。今後は発茸抑制因子の特定に向けて,高グルコース下で発茸可能な突然変異体のさらなる解析・原因遺伝子同定を進める。また,発茸抑制の律速となることが見出されている遺伝子を出発点として,同遺伝子の転写抑制に直接関与する制御因子(発茸抑制因子)の探索を生化学的手法により進める。

次年度使用額が生じた理由

学会のオンライン開催により旅費の使用額が当初予定よりも抑えられた。また,実験補助の人件費・謝金としてならびに論文投稿に関連した諸経費として今年度の使用がなかったため支出が抑えられた。これらに要する支出のタイミングは流動的であり,次年度以降にまとめて必要となる公算が大きい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] グルコースがウシグソヒトヨタケの子実体発生を抑制する機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      坂本裕一,佐藤志穂,刑部敬史,吉田裕史
    • 学会等名
      第21回糸状菌分子生物学コンファレンス
  • [学会発表] ウシグソヒトヨタケ子実体発生開始におけるオートファ ジーの関与2022

    • 著者名/発表者名
      吉田裕史,坂本裕一
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi