研究実績の概要 |
本研究は,ダイズ懸濁培養細胞(ECW1)におけるイソフラボノイド分解代謝機構を解明することを目的としている.本年度は,ECW1細胞内外のイソフラボノイド代謝応答を詳細に解析するため,エリシター処理としてYeast extract(YE)だけでなく,シクロデキストリン(CD)やメチルジャスモン酸を添加し,細胞内のイソフラボノイドおよび培地中に分泌されたイソフラボノイドをHPLCにより解析した.また,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるスベロイルビスヒドロキサム酸(SBHA)を添加した際のイソフラボノイド代謝応答も解析した.HPLCによる代謝物解析の結果,5 mMのα-CDおよびγ-CDの添加および低濃度のSBHAの添加は細胞内外のイソフラボノイド組成に大きな影響を与えなかった.一方,これまでの解析と同様に,YEの添加は細胞内のイソフラボノイド蓄積量を急速に減少させることが示され,この時,細胞外へ分泌されるイソフラボノイド量はあまり変化しなかった.したがって,今回施した処理においてはYE処理時にのみ,イソフラボノイドの細胞内分解が生じていることが示唆された.YE処理後,1, 2, 5, 10, 24時間経過後の細胞をサンプリングし,RNA-seqによる解析を行った.発現変動遺伝子(DEG)の抽出を行い,イソフラボノイド代謝分解に寄与する候補遺伝子の探索を行った.DEGとしてイソフラボノイド合成酵素群が多数ピックアップされ,YE処理に応答したイソフラボノイド生合成増強に寄与する遺伝子が多数見出された.一方,分解に関与する遺伝子としてはβグルコシダーゼ(BULU)パラログが複数見出されたが,イソフラボノイドアグリコンの分解に関与する候補遺伝子はまだ見出されていない.
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