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2022 年度 実施状況報告書

マメ科植物の農業形質改良に資する根粒形成遺伝子スイッチング機構の構造基盤解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K14824
研究機関筑波大学

研究代表者

野崎 翔平  筑波大学, 生命環境系, 助教 (20850910)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード転写因子 / マメ科植物 / 根粒形成 / 遺伝子制御 / 相互作用解析 / X線結晶構造解析 / 窒素吸収 / 窒素栄養応答
研究実績の概要

根粒菌と共生窒素固定を行うマメ科植物は、窒素栄養が豊富な土壌にて根粒共生を自ら抑える機構をもつが故に、農業上において望ましい “根粒共生と窒素肥料による窒素栄養の獲得の両立” が困難となっている。本研究では、栄養豊富な土壌環境下でも根粒共生できるマメ科植物の開発を見据え、鍵転写因子群が司る根粒形成遺伝子スイッチング機構を物理化学的な側面から解明することに取り組む。本研究での成果は、植物-微生物共生の研究分野に新規軸を打ち出すとともに、ダイズなどの農業上重要なマメ科植物の中で眠る潜在能力を最大限に引き出すための基盤知見にもなると期待される。
初年度となる2022年度においては、根粒形成を促進する転写因子NINとそのホモログであり硝酸に応答するのみならず根粒形成を抑制する転写因子NLPの間においてDNA結合特異性および遺伝子制御の違いを生み出すアミノ酸配列モチーフを同定した。さらに、それら転写因子群のDNA結合特異性および遺伝子制御特異性を逆転させるキメラ転写因子群の作出にも成功した。またAlphaFold2による予測構造より、そのアミノ酸配列モチーフがどのような物理化学的なメカニズムでNINとNLPの異なるDNA結合特異性を生み出すのかを考察し、実際に生化学的解析でその妥当性を示した。さらには、上記の過程でデザインしたキメラ転写因子を用いることで、窒素栄養が豊富な条件下でも根粒を形成できるミヤコグサ(マメ科植物のモデル生物)の創出にも着手し始めている。さらに、構造解析に適したコンストラクトを作成し、その精製法を確立したことで、当該転写因子群と標的DNAの複合体構造を実験的に明らかにするための基盤を構築した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定通り、当該転写因子群がもつ根粒形成遺伝子スイッチング機構(ONとOFF)において鍵となるアミノ酸配列モチーフを同定することができ、さらに立体構造予測と生化学的解析を駆使してその分子構造基盤に迫ることができた。また、当該転写因子群と標的DNAの複合体構造を実験的に明らかにするために、構造解析に適したコンストラクトを作成して、その精製法を確立することができた。さらには、上記の過程でデザインしたキメラ転写因子を用いることで、窒素栄養が豊富な条件下でも根粒を形成できるミヤコグサ(マメ科植物のモデル生物)の創出にも着手し始めている。

今後の研究の推進方策

マメ科植物の根粒形成遺伝子スイッチング機構を物理化学的な側面から理解し、より精密に改変するためには、転写因子と標的DNAの複合体構造の取得が必要不可欠である。次年度では、X線結晶構造解析およびクライオ電子顕微鏡による単粒子解析を用いて、これまでホモログの構造も解かれていない当該転写因子の立体構造を明らかにし、原子分解能レベルで根粒形成を司る転写制御を理解する。そして、ダイズなどの農業上重要なマメ科植物の中で眠る潜在能力を最大限に引き出すための基盤知見を蓄積させる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Nitrate transport via NRT2.1 mediates NIN-LIKE PROTEIN-dependent suppression of root nodulation in <i>Lotus japonicus</i>2022

    • 著者名/発表者名
      Misawa Fumika、Ito Momoyo、Nosaki Shohei、Nishida Hanna、Watanabe Masahiro、Suzuki Takamasa、Miura Kenji、Kawaguchi Masayoshi、Suzaki Takuya
    • 雑誌名

      The Plant Cell

      巻: 34(5) ページ: 1844~1862

    • DOI

      10.1093/plcell/koac046

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Brassinosteroid-induced gene repression requires specific and tight promoter binding of BIL1/BZR1 via DNA shape readout2022

    • 著者名/発表者名
      Nosaki Shohei、Mitsuda Nobutaka、Sakamoto Shingo、Kusubayashi Kazuki、Yamagami Ayumi、Xu Yuqun、Bui Thi Bao Chau、Terada Tohru、Miura Kenji、Nakano Takeshi、Tanokura Masaru、Miyakawa Takuya
    • 雑誌名

      Nature Plants

      巻: 8(12) ページ: 1440~1452

    • DOI

      10.1038/s41477-022-01289-6

    • 査読あり
  • [学会発表] 根粒形成を促進する鍵転写因子のDNA結合特性に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      野崎 翔平, 野田 桃菜, 三浦 謙治, 壽崎 拓哉
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 硝酸態窒素による根粒形成制御に関わる自然変異の同定2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤 百代, 番場 大, 陳 漢謀, 野崎 翔平, 田島 由理, 三浦 謙治, 佐藤 修正, 壽崎 拓哉
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] ブラシノステロイド新規シグナル伝達因子BPG4によるクロロフィル生合成制御を介した葉緑体恒常性維持メカニズムの解明2023

    • 著者名/発表者名
      立花 諒, 阿部 晋, 丸上 萌々, 山上 あゆみ, 野崎 翔平, 宮川 拓也, 稲葉 丈人, 松井 南, 久城 哲夫, 伊福 健太郎, 浅見 忠男, 中野 雄司
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [備考] 【プレスリリース】土壌から吸収する? それとも 微生物からもらう?

    • URL

      https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20220212000000.pdf

  • [備考] 【プレスリリース】植物の生長を促す植物ホルモンの遺伝子発現調節機構の新しい仕組み

    • URL

      https://www.tsukuba.ac.jp/journal/pdf/p20221228140000.pdf

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公開日: 2023-12-25  

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