生物の状態がAからBに変化するとき、不安定な分岐点状態を介して変化することが知られてきている。我々は不安定な分岐点状態を細胞モデルを用いることで観測を行うことを目指しており、炎症細胞モデルを使用し連続観察することで、ある特定の時点で細胞状態が不安定になることを発見した。我々はマウスマクロファージ細胞RAW264.7にリポポリサッカライド(LPS)刺激を与え細胞に炎症刺激を与え、細胞を生きたままラマン分光法による経時的な計測を行い、発見した分岐点が揺らいでいることの再現性確認を行った。得られたラマンスペクトルに対し揺らぎを検出できる数理解析であるダイナミカルネットワークバイオマーカー(DNB)解析を行ったところ、刺激後からある特定の時間に必ずラマンスペクトルの揺らぎが必ず生じていることを確認した。ラマン分光法とDNB理論の組み合わせで細胞の遷移点を特定することに成功し、計5回の実験で再現性の確認をとることに成功した。 得られた分岐点時点にどのような細胞変化が生じているのか、細胞炎症マーカーであるTNF-αやIL-6の発現量をELISA法により調べている。こちらも分岐点時点でデータに変化が生じているのを確認しており、現在再現性の検証を行っている。 本研究で確認した揺らぎはこれまで報告のない時間であり、現在はゆらぎ時点で生じている細胞の炎症について解明を進めており、今年度中の論文投稿を目指している。 レーザー学会第44回年次大会及び国際学会APLS2023で成果についての報告を行っている。
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