研究課題/領域番号 |
22K14835
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡村 仁則 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80845785)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アジリジン / 天然物 / 全合成 / 抗菌活性 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
MRSAを含む多剤耐性菌に対する高い抗菌活性を示す天然物ficellomycinは、アジリジンが縮環した複雑な炭素骨格を有する天然物であるが、その構造希少性及び魅力的な生物活性にもかかわらず合成法が確立されておらず臨床開発研究が停滞している。本研究では、ficellomycin及びその類縁天然物vazabitide Aの効率的な合成法の開発とより高活性な誘導体の創製が目的である。その達成に向け、従来のアプローチとは異なる「縮環アジリジン構造の終盤での一挙構築」を鍵戦略として、本構造を有する天然物の一網打尽的合成法の確立を目指した。 1年目は、縮環アジリジン構造の構築に取り組んだ。環化前駆体における1,2-ジアミン構造の効率的構築法を目指し、1)デヒドロアミノ酸エステルへのアミノ酸ユニットの付加および2)還元的アミノ化によるアミン形成、3)遷移金属を用いるアミドの還元的アルキル化の3つのアプローチを検討した。その結果、還元的アルキル化を利用するアプローチにおいて目的の1,2-ジアミン構造へと至る可能性を見いだせた。 今後は、本アプローチに基づいて合成を進め、縮環アジリジン構造の構築法を確立するとともに、標的天然物の合成を達成し構造活性相関へ展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
縮環アジリジン構造へと至る環化前駆体の合成が当初の予想よりも困難であった。当初はデヒドロアミノ酸エステルに相当する基質に対し、セリン等価体の求核置換反応またはaza-Micheal付加反応により環化前駆体である1,2-ジアミン構造を得ることができると予想していた。しかしながら、本アプローチでは所望の付加体は得られず、代替アプローチとして還元的アミノ化によるアミノ基導入を検討したがこちらもアミノ基の導入には至らなかった。条件を精査した結果、2つのセリンユニットをあらかじめアミド結合にて連結した後、遷移金属による還元的アルキル化によってアルキル基を導入するアプローチにて所望の炭素-窒素結合を導入できる可能性を見いだせた。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に得られた知見を基に、まずは環化前駆体の構築法を速やかに確立する。遷移金属触媒を用いた還元的アルキル化を鍵とした戦略により、2分子のセリン等価体を連結したアミドに対し、求核的にアルキル基を導入し1,2-ジアミン構造を得る。その後、アジリジン環の構築に続きピロリジン環の閉環を経て天然物へと導く。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予想に反し、目的とする縮環化合物へと至る前駆体の合成が困難であり、環化反応に必要となる試薬類やガラス器具類の分だけ金額に余剰が発生することとなった。次年度において鍵となる環化反応の検討を行う予定のため、当該分は次年度へと繰り越して使用する。
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