澱粉は幅広い加工・調理特性を有し、特有の物性を生み出す。一方、澱粉の種類、濃度、保存によってゲル的・ゾル的性質は大きく変化するため、澱粉特有の物性は限られた条件下で生み出されている。本研究では、澱粉の種類・濃度・保存期間によって異なる物性を定量的に把握し、それらの物性に起因する物理的な構造の構築状態を明らかにすることを目的とした。令和5年度では、テクスチャー測定により、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉の物性を評価した。 試料は小麦澱粉、馬鈴薯澱粉を用いた。澱粉濃度は15%、30%、保存温度は4℃、保存期間は0、1、3、7日間とした。テクスチャー測定では、規定量の澱粉と水を入れたチューブを攪拌しながら95℃で30分間加熱した澱粉ゲルを試料とした。澱粉ゲルは直径10mm、高さ10mmに切り出した後、弾性測定、破断測定、貫入破断測定を行った。 澱粉ゲル調製直後(0日目)の小麦、馬鈴薯の破断曲線は大きく異なり、馬鈴薯は小麦よりも破断荷重、破断歪率いずれも著しく大きかった。すなわち、馬鈴薯は小麦と比べて硬く伸びやすいゲルを形成することが示された。保存した澱粉ゲル(1、3、7日目)では、小麦30%の破断荷重は3日目から有意に増加した。破断歪率は15%では3日目、30%では1日目から有意に減少した。馬鈴薯は15%・30%いずれも保存により破断荷重は有意に増加、破断歪率は1日目に有意に減少した。以上より、小麦、馬鈴薯いずれも15%より30%で物性の変化が早いことを確認した。また、同じ濃度の小麦・馬鈴薯を比較した場合、30%では大きな違いはなかったものの、15%では小麦より馬鈴薯で破断荷重および破断歪率の変化が早く、低濃度(15%)の場合、小麦より馬鈴薯で老化が早いことが示された。また、破断荷重より破断歪率の変化が早かったことから、澱粉の保存に伴う物性変化は、保存初期で脆さとして現れ、その後保存とともに硬くなることが明らかとなった。
|