研究課題/領域番号 |
22K14854
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
山崎 智拡 北海道医療大学, 医療技術学部, 講師 (10784829)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リステリア / Listeria monocytogenes / 遺伝子変異頻度 |
研究実績の概要 |
リステリアは、食品を介して感染し、髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こす細菌であり、土壌や水中などの自然環境中に広く存在している。高濃度食塩や低温、乾燥などにも強く、食肉やチーズなどの様々な食品から検出されている。そのため、リステリアは冷蔵庫などを用いた現代の食品長期保存技術を用いたとしても、アウトブレイクを引き起こす可能性が高い細菌である。一方、リステリアの環境から検出される株と臨床から検出される株には、細胞侵入性や薬剤耐性能などの傾向に明らかな違いがあることが知られている。しかしながら、リステリアは基本的にヒト-ヒト感染を引き超すことがないため、臨床で分離される株は環境中に存在している株がヒトに適応したものであると考えられる。そこで本研究では、環境から大衆へのリステリアの接点の一つとして、日常的に触れる機会の多いと考えられるスーパーマーケットで市販されている食肉から、リステリアを分離し、その遺伝子や薬剤耐性能に加えて、遺伝子変異頻度を調べることで、環境から臨床へのリステリアの病原性の違いを引き起こしている因子を検証したい。研究初年度である当該年度は、まず市販の食肉300検体からリステリアの分離を試みた。リステリアは培地上のクロモアガー・リステリア寒天培地上のコロニー性状をもとにして回収し、遺伝子解析によってリステリアであることを確認した。この操作によって、約90株のリステリアを分離することに成功した。さらに、分離したリステリアの血清型と病原遺伝子の有無を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はまず市販食肉からのリステリアの分離を試みた。リステリアの分離株数は、研究計画で目標とした100株にはやや届かなかったものの、食肉300検体から約90株のリステリアを分離することに成功した。分離されたリステリアについては血清型の同定を行い、この点も計画通りに進んでいる。一方、当初計画していた薬剤感受性試験については現在実施中であるため、まだ結果は出ていないが、次年度の実施を計画していたリステリアの病原性遺伝子の解析を先行して行った。そのため、総合してみれば、当初の計画から見るとおおむね順調に研究を遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年度に食肉より分離したリステリアを用いて、薬剤感受性試験やバイオフィルム形成能の測定、消毒薬抵抗性試験などのリステリアの性状解析を行っていく予定である。当初の研究計画とリステリアの性状解析における項目の順番は前後するかもしれないが、研究計画に示した性状解析項目について実施可能な範囲で並行して進めていく計画であり、現状では研究遂行における大きな問題点はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、使用する消耗品が想定よりもコンパクトにできたことに加えて、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、学会への参加を取りやめたため、支出額が想定よりも低くなった。しかしながら、物価の高騰により消耗品費は確実に上昇しており、新型コロナウイルス感染症の蔓延の鎮静傾向がみられることから、次年度は学会への参加を積極的に行っていく予定である。
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