研究課題
本研究の目的は、標準品が入手困難かつ、食品に高含有される異常アミノ酸およびペプチドの抗酸化ストレス機能を解明することであり、その成果を機能性食品の開発に活かすことである。食品にはタンパク質を構成しないアミノ酸(異常アミノ酸)およびそれによって構成されるペプチド(異常ペプチド)が含まれ、抗酸化作用や抗炎症作用、免疫増強作用、血圧降下作用などの機能が報告されており、健康に役立つ可能性がある。古くから薬理効果が高いとされてきたネギ属植物には、ユニークな異常アミノ酸やペプチドが多数、高含有されている。しかしながら、それらのアミノ酸およびペプチドは市販されておらずその機能性研究はほとんど進んでいない。本研究ではネギ属植物にユニークな異常アミノ酸やペプチドを化学合成し、それらの抗酸化ストレス効果やそのメカニズム、バイオアベイラビリティを明らかにする。ネギ属植物であるニンニクには異常アミノ酸として、アリインが高含有されている。まず、アリインの機能性を解明すべく、令和4年度の研究ではアリインの化学合成に成功した。通常、化学合成したアリインはニンニクにほとんど存在しない立体異性体が含まれる混合物となってしまうため、分離技術の開発が必要だった。令和5年度の研究ではHPLCによる分離技術を開発し、化学合成したアリインから立体異性体である(+)-アリインと(-)-アリインを分離し、動物および細胞実験に必要な量を得ることに成功した。これらを用いて、マウスメラノーマ細胞に与える影響を評価した。さらに、タマネギに含まれアリインの類縁体であるイソアリインについても、この分離技術を応用して異性体の分離に成功した。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度においては、一度に分離できる(+)-アリインと(-)-アリインの量は僅かであり、機能性評価における実験は実施が難しかった。令和5年度においてはHPLCの分離条件を検討し、一度に十分な量の(+)-アリインと(-)-アリインを分離精製できるようになった。また、この条件は他の類似成分にも適応でき、タマネギに含まれアリインの類縁体でもあるイソアリインについても、この分離技術を応用して異性体の分離に成功した。(+)-アリインと(-)-アリインについてはマウス皮膚がん細胞であるメラノーマ細胞を用いて生存率への影響評価を行った。分離前の(+)および(-)アリインの混合物とは異なる結果が得られ、この結果の解析においてはさらなる検討が必要であった。
令和5年度の研究では、アリインを一度に大量に分離できる方法を開発し、合成物質をより効率的に分離精製できるようになった。こうして得られた異常アミノ酸やペプチドについては、細胞のみならず動物を用いて、抗酸化ストレス効果やそのメカニズム、バイオアベイラビリティを検証していく。
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