研究課題/領域番号 |
22K14863
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 敦子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (70909093)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 酵母 / Tricalbin / セラミド / 非小胞輸送 |
研究実績の概要 |
細胞内セラミドの量はオルガネラ間輸送によってコントロールされている。小胞体からゴルジ体へのセラミド輸送には、小胞輸送に加えて非小胞輸送が存在する。これまでの解析から私たちは、真核細胞で保存された小胞体膜タンパク質であるTricalbin (Tcb1, 2, 3) が、セラミドの非小胞輸送に必要であることを発見した。しかしながら、Tricalbinの機能がどのように制御されているか、他にはどのようなタンパク質が関与しているのかなど、セラミド非小胞輸送機構の全貌は未だ謎に包まれている。そこで本研究は、セラミド非小胞輸送に関与する候補タンパクのリストアップと機能同定を目指す。この目的を達成するために本年度は、Tcb3と相互作用する可能性があるタンパク質について、(1)共免疫沈降実験によるタンパク質結合の検証、(2)細胞内局在観察、(3)タンパク質立体構造予測による結合モデルの検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に実施したTcb3と相互作用する可能性のあるタンパク質を検証するにあたって実験系を確立するために、既に相互作用する可能性が報告されているTcb1とTcb2を用いて、条件検討を含む解析を行った。研究実績の概要は、以下の3点である。(1)Tcb1-HA, Tcb2-HAを用いて、共免疫沈降実験の条件検討および実験方法の改良を行い、Tcb3-GFPと候補タンパク質との結合が確実に検出でき、かつ非特異的なものでないことを証明できた。(2)Tcb1とTcb2にGFPを融合させた株およびプラスミドを作成し、イメージング解析および定量を行った結果、Tcb1-GFP, Tcb2-GFPがTcb3-GFPとは特徴の異なる局在パターンを示すことを見出した。(3)タンパク質立体構造シミュレーションによりタンパク質同士の結合モデルの構築を行った。その結果、Tcb1, Tcb2, Tcb3のそれぞれの膜貫通領域同士が相互作用しており、Tcb3を中心に取る形で複合体が形成されるモデルが得られた。また、(1)および(3)の成果を、科学ジャーナルeLifeにて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在までに構築・改良できた共免疫沈降実験の解析手法を用いて、引き続きTcb3タンパク質と候補タンパク質との結合について解析を行う。また、そこで得られた候補について、セラミドの輸送に関与するかどうかを調べるため、遺伝学的解析、生化学的解析を行う。候補タンパク質がTcb3タンパク質と協調してセラミドの輸送あるいは代謝に関与するのであれば、二重遺伝子破壊株は、セラミド輸送の下流でスフィンゴ脂質生合成を阻害する薬剤Aureobasidin Aに対して感受性を示すと考えられる。また、候補タンパク質がセラミドの非小胞輸送に関与するのであれば、その遺伝子の欠損はSEC遺伝子変異株において小胞輸送非依存的なIPC合成を低下させると考えられる。これらの解析を行うために、候補タンパク質の遺伝子とTCB3遺伝子との二重破壊株、およびSEC遺伝子との二重変異株の作製を行う。
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