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アブラナ科植物の多くは自己花粉では受精を行わず、同種の他個体花粉でのみ受精を行う自家不和合性を示す。この反応は、S遺伝子座に存在する花粉側因子であるSP11/SCRと雌しべ側因子であるSRKによって制御され、受粉時の雌雄因子の相互作用により自己と非自己の認識が行われている。乳頭細胞は他家花粉へと水を渡し花粉吸水を促進して花粉管を発芽させるが、自家花粉では水を受け渡さず、花粉吸水と花粉管伸長は抑制される。これまで乳頭細胞から花粉へ水の移行を可能にする分子機構の詳細は明らかになっていない。本研究では、乳頭細胞内で浸透圧制御が存在し、これが花粉への水の移行を調節しているという仮説を立て、植物細胞の浸透圧調節を担う細胞膜H+-ATPase活性とアブラナ科植物の自家不和合反応との関係性について調べた。柱頭のH+-ATPaseの活性を化合物により変化させると、活性を促進した場合、他家花粉の花粉吸水や花粉管伸長が抑制され、活性を抑制すると自家花粉の花粉吸水と花粉管伸長が促進された。また、柱頭のH+-ATPaseの活性に重要なC末端のThrのリン酸レベルが、未受粉時と比べて自家受粉時に上昇し、他家花粉時では上昇しないことが示された。さらに、乳頭細胞から花粉への水の移行と細胞膜H+-ATPase活性の関係性を遺伝学的に明らかにするため、シロイヌナズナのH+-ATPase恒常活性型変異体ost2-2Dの雌しべを用いて、花粉吸水と花粉管伸長を調べた。その結果、野生株の雌しべと比較して、ost2-2D変異体雌しべでは花粉吸水と花粉管伸長の速度が低下した。以上のことから、細胞膜H+-ATPase活性がアブラナ科植物の乳頭細胞の花粉への水移行に機能していることが示され、乳頭細胞内の浸透圧制御がアブラナ科植物の自家不和合性に関与している可能性が示唆された。以上の結果をまとめ、国際学術雑誌に投稿した。
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