研究課題/領域番号 |
22K14868
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡田 聡史 名古屋大学, 生物機能開発利用研究センター, 助教 (30898002)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ソルガム / 高糖性 / 量的形質 / トランスクリプトーム解析 / ファインマッピング |
研究実績の概要 |
脱炭素社会構築へ向けて、バイオリファイナリー産業が注目される中、糖はその発酵原料であるため重要であり、糖料作物の高糖性遺伝子はその鍵となる遺伝子である。本研究は、ソルガムの高糖性に寄与する量的形質遺伝子座qBRX-6の責任遺伝子同定を目的としている。ソルガムの茎の糖度は環境要因や複雑な遺伝的構造が絡み合った複雑形質と考えられたため、申請者は糖度の代わりに、ショ糖濃度と相関する遺伝子群の発現量を形質とみなして、候補領域の絞り込みを行うことを考えた。 ショ糖濃度と相関する発現量を持つ遺伝子群を同定するために、時系列トランスクリプトーム解析を行なった。スイートソルガムSIL-05(高糖性、染色体断片導入の母本)、74LH3213(低糖性、ゲノム背景の母本)、74LH改0号(qBRX-6候補領域を含むSIL-05断片を74LH3213に導入した系統、高糖性)を供試し、時系列にサンプリングした節間からRNAの抽出と、節間搾汁液のショ糖濃度を定量した。ショ糖濃度は開花直後のサンプル以降で急増していたことから、開花直前以降のサンプルに着目してRNA-seq解析を行った。共発現解析を行い、ショ糖濃度の変動と品種間の発現量の差を考慮して、遺伝子発現パターンが類似する13遺伝子群を検出した。これらの遺伝子群はqBRX-6の候補領域の絞り込みの際に、マーカー遺伝子になると期待された。 次に、qBRX-6の候補領域を対象にした染色体断片置換系統群(Chromosomal Segment Substitution Lines: CSSLs)の作出を行なった。当初計画よりも材料の世代促進に成功し、qBRX-6候補領域に組換えを持つCSSLsが創出できた。次年度、これらのCSSLsを用いた時系列トランスクリプトーム解析によって、候補領域の絞り込みを行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、まず、時系列トランスクリプトーム解析を行なった。当初、サンプリングを計画していた栄養成長期の節間は非常に小さく、分析が困難であったため、幼穂形成初期以降の節間を対象に6時点でサンプリングを行なった。これらの時点のうち、ショ糖濃度が急激に増加する時点は開花直後以降であることが明らかとなったため、4時点(開花1週間前、開花直後、開花2週後、開花4週後)をRNA-seq解析に供試することで、十分な結果が得られると期待された。これらのトランスクリプトームデータを用いて、ショ糖濃度との相関解析や品種間の発現量の差に基づいて、遺伝子群を複数検出することに成功した。また、来年度解析対象にするCSSLsは、当初予定していた計画より世代を進めることができたため、年度内に作出できた。以上の研究状況より、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究によって、時系列トランスクリプトーム解析を用いて、ショ糖濃度と相関する遺伝子群が検出できており、2023年度はこれらをマーカー遺伝子群として、その発現量を形質とみなしてqBRX-6の候補領域の絞り込みを行う予定である。しかし、これらの遺伝子群が頑健なマーカーとして機能するかを検証する必要があるため、SIL-05、74LH3213、74LH改0号を対象にした時系列トランスクリプトーム解析は2023年度も行う計画を立てている。 当初、2023年度に予定していたCSSLsの作出は、2022年度中に完了することができ、実験に用いる十分な種子も確保できた。これらの材料のうち、3系統についても時系列トランスクリプトーム解析に供試することで、マーカー遺伝子群の発現量によって候補領域の絞り込みを行う。また、これらCSSLsは環境要因を可能な限りコントロールできる温室でも栽培し、Brix糖度やショ糖濃度を各系統20個体以上測定して候補領域の絞り込みを行う。これらの結果を比較することによって、マーカー遺伝子群の発現量を用いたマッピング法の検証を行う。
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