研究課題
水ストレス下での土壌種類間の根系発育および地上部生育を比較するとともに、根系発育と土壌種類との相互作用を評価するために、本年度は2つの実験を実施した。深根性形質を排除した条件下で根系および地上部生育を調査するために、ビニールハウス内に設置したコンクリート枠に異なる土壌 (黒綿土、砂質粘土、火山灰土、赤色土)を充填し、陸稲品種NERICA 1を栽培した。砂質粘土は、水ストレスの影響を受けにくかった。一方で、火山灰土および赤色土は、水ストレスの影響を受けやすく、水ストレス区の収量は砂質粘土よりも低かった。土壌水条件にかかわらず、総根長は火山灰土および赤色土で大きい値を示した。総根長と地上部生育との間には有意な関係は認められなかった。また、深根性形質を含む根系および地上部生育を調査するために、長さ85cmのポットを用いて、イネ3品種(NERICA1、NERICA4、Komboka)を3種類の土壌 (黒綿土、砂質粘土、赤色土) で、異なる灌水条件(W1:土壌表面からのみ灌水する区、W2:ポット底面からのみ灌水する区、W3:土壌表面とポット底面の両方から灌水する区)で栽培した。各灌水条件における土壌含水率とその動態は、土壌種類によって異なった。地上部生育は、W1では、黒綿土が最も優れていた。また、砂質粘土は、地表面の根系発達は促進され、気孔コンダクタンスも高かったが、地上部生育には貢献しなかった。これは、砂質粘土は透水性が高いため、養分溶出が生じていたためと考えられた。W2では、赤色土の根系はすべての層で発達しており、地上部生育は最も優れていた。このことには、赤色土の高い毛管力も関係していたと考えられた。一方で、砂質粘土は、下層部の根系は発達しておらず、地上部生育は低下した。一部の処理条件では、地上部生育は土壌水分率とその動態、根系発達によって関係も示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、昨年度に引き続き、異なる土壌を用いて栽培試験を進め、地上部生育および根系生育に関する年次反復データを得ることができた。また、昨年度中止した国内での栽培試験を、ポット試験に切り替え実施することができ、現在データ解析を進めている。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
来年度は、本年度に実施した栽培試験の直径別の根長解析を進める。また、異なる土壌を用いた栽培試験では、本年度供試したNERICA1に加え、供試品種を増やし実施することで、栽培土壌にあわせた有用な根系形質の同定を進める。これまでに得られた栽培試験の成果をまとめ、学術雑誌で投稿する予定である。
本年度は、実験補助員を雇用する予定であったが実験補助員が見つからなかったこと、また、予定していた海外出張ができなかったことにより、次年度使用額が生じた。引き続き実験および分析を進めるにあたり実験補助員を必要とするため雇用経費に充てるとともに、栽培試験を実施するために必要な物品および消耗品の購入に使用する予定である。
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Plant Production Science
巻: 26 ページ: 309~319
10.1080/1343943X.2023.2245127