研究課題/領域番号 |
22K14893
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安達 広明 京都大学, 農学研究科, 特定助教 (60909513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 植物免疫 / 免疫受容体 / NLRタンパク質 / 転写制御 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
植物細胞には、細胞内免疫受容体(NLR:Nucleotide binding-leucine rich repeat protein)があり、病原体が分泌するエフェクター分子を認識し免疫システムを活性化させる。近年、植物のNLR免疫機構の新しい概念として、機能分化した複数のNLRタンパク質が協調してはたらき、免疫応答を誘導するNLRネットワークモデルが提唱されている。それら機能分化型NLRは、エフェクター認識に特化した“センサーNLR”と、免疫シグナル誘導に関わる“ヘルパーNLR”に大別される。ナス科植物において、センサーNLRとヘルパーNLRをコードする遺伝子は、異なる染色体に座上しているにも関わらず、共に機能するという特徴があるが、それら受容体遺伝子が転写レベルでどのように制御されているかは未解明である。本研究では、ナス科モデル植物であるベンサミアナタバコを用いて、NLR遺伝子群の組織特異的発現制御に関わる転写因子を探索することを目的とした。今年度は、ベンサミアナタバコの葉および根組織におけるトランスクリプトームデータと、ベンサミアナタバコゲノムから抽出したNLR遺伝子上流プロモーター配列を比較し、葉および根で発現するNLR遺伝子のプロモーター領域に保存されたシス配列候補を同定した。免疫受容体ネットワークを構成するNLR遺伝子の転写制御機構を明らかにできれば、植物の免疫受容体機構の分子進化の理解に繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ベンサミアナタバコにおいてNLR遺伝子の転写制御に関わるシス配列候補を同定するため、ベンサミアナタバコの葉および根から抽出したRNAを用いたRNA-seqデータと、NLR遺伝子の上流プロモーター配列を抽出したデータセットを活用し、葉または根で発現するNLR遺伝子のプロモーター領域に保存された~10 bpの塩基配列を探索した。このシス配列探索法により、機能的な転写因子結合配列の候補を複数同定した。得られたシス配列候補の情報から、どの転写因子ファミリーがNLR遺伝子群の発現制御に関わるか、in silicoでの絞り込みを行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
ベンサミアナタバコにおいて、NLR遺伝子の発現制御に関わることが示唆された転写因子ファミリーに着目し、葉と根でNLR遺伝子と共発現している転写因子遺伝子をリスト化する。さらに、遺伝学的解析および生化学的解析により、着目した転写因子がNLR遺伝子の発現制御に関わるかを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、トランスクリプトーム解析およびプロモーター配列のin silico解析に主に取り組んだため、次年度使用額が生じた。次年度は、研究計画の実施に従い、植物育成、遺伝学的解析、生化学的解析等に関わる一般試薬、消耗品及び機器類の購入に使用する。
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