研究課題/領域番号 |
22K14900
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
日野 真人 九州大学, 農学研究院, 助教 (70878082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カイコ / 断片染色体 / 人工染色体 / テロメリックリピート |
研究実績の概要 |
カイコ人工染色体作製に関して、断片染色体の持つゲノム領域を保持するカイコBACへ緑色蛍光タンパク質マーカー・薬剤耐性マーカーの導入をλ-red recombination systemを用いて行なった。加えて、赤色蛍光タンパク質マーカーと2個のテロメリックリピートの導入をCre/loxPシステムを用いて行なった。線状化してカイコ細胞へ導入できるように、I-SceI切断サイトを2カ所のテロメリックリピートの末端に挿入している。今後は、このカイコBACをI-SceIで切断し線状化後、カイコ細胞へ導入する予定である。トランスフェクションを用いてカイコ培養細胞へ、マイクロインジェクションを用いてカイコ卵へ導入し、DNAの挙動を観察する。また、この時、線状化したDNAを用いる実験区と環状のままのDNAを実験に供試し、DNAの状態が挙動にどのような影響を与えるのかについても検証する。 そして、複数存在する断片染色体の配列決定のために、断片染色体を保持するカイコ系統らと既にゲノム配列が判明しているp50系統とのバッククロスを前年度に引き続き行なった。また、染色体維持にテロメアがどの程度寄与しているのかを明らかにするため、前段落で記載したベクターからテロメリックリピートを削除したベクターの作製を行なった。テロメリックリピートの有無で、カイコ培養細胞・カイコ個体におけるDNAの挙動がどのように変化するのかを今後観察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カイコ人工染色体の候補となる断片染色体が保持する領域を持ったBACへのマーカー遺伝子の導入、およびテロメリックリピートの導入を行なった。DNA長が長く、さらにリピート配列が存在しており、ベクター作製の難易度が高かったものの、適宜ベクターの再設計を行うなどして問題をクリアした。おおむね問題の解決はしたものの、想定していない問題が出現し、計画通りには進捗しなかったため、進捗状況を「やや遅れている」とした。 また、ベクター作製上の問題を解決することに注力したため、断片染色体の配列決定に時間を割くことができなかった。次年度は配列決定を行い、断片染色体脱落率決定因子の同定を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
作製したカイコ人工染色体の候補となるベクターをカイコ個体とカイコ培養細胞へマイクロインジェクションとトランスフェクションを用いて導入し挙動を観察することで、実際にベクターがカイコ細胞内で維持されるかを確認する。断片染色体の全長をベクターに乗せられてはいないので、作製したベクターが人工染色体として不完全であれば、さらに長鎖化したベクターを作製し安定して保持される人工染色体の作製を目指す。 サンプルとして保存している断片染色体を持ったp50バッククロス系統のゲノムDNAをNGSに供して、断片染色体の配列を決定する。断片染色体の配列比較を行い、断片染色体脱落率決定因子の同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
カイコ人工染色体ベクターを構築する際に、予期していなかった問題が発生し、ベクター設計のやり直しなどに時間を費やしたため、予定していた実験が行えなかった。これにより、次年度使用額が生じた。発生した問題はおおむね解決したため、次年度に今年度行えなかった実験を行い、予算を使用する。
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