研究課題/領域番号 |
22K14901
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
野崎 友成 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 産総研特別研究員 (80932467)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 組織特異的倍数化 / シングルセルレベル解析 / 細胞内共生 / 真社会性昆虫 |
研究実績の概要 |
倍数化した細胞は、多細胞生物の代謝が活発な組織において頻繁に見いだされるが、細胞の倍数化と遺伝子発現の関係について定量的研究は非常に少ない。本研究は、昆虫の体組織でみられる特徴的な倍数化細胞について、シングルセルレベルでの遺伝子発現情報を取得・解析する手法を確立することを目的としている。具体的にはシロアリ女王の脂肪体とアブラムシの共生器官の細胞に対し、倍数化と遺伝子発現の関係を明らかにする。細胞・組織学的、生態学的な情報も収集し、組織特異的倍数化の意義を広い視点から解明することが最終目標である。 本年度は研究を遂行するうえで基礎的情報となる、組織を構成する細胞の倍数化ダイナミクスの解明とその論文化に特に注力した。シロアリ女王の脂肪体では、女王の繁殖成熟に伴い、脂肪体を構成する細胞タイプの一つであり、代謝が活発な脂肪細胞のみが倍数化するということを明らかにした。またアブラムシ共生器官では、アブラムシの各成長ステージおよび表現型に対し倍数性解析を行い、細菌を格納する細胞において、胎生メスの成虫時に最大256倍体に達することを明らかにした。前者については論文化を進めており、後者については学術論文として発表した。次年度以降に行うシングルセルレベルでの遺伝子発現解析の準備もおこなった。具体的には細胞もしくは核の単離精製およびセルソーティングやマイクロピッキングなどの条件検討に時間を費やした。 次年度は実際に遺伝子発現解析を組織全体と一細胞ごとのレベルで行い、倍数化ダイナミクスと相関する遺伝子の発現解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は所属が変更となり、それに伴いエフォートの変更をおこなったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基礎的情報を論文化するとともに、実際に遺伝子発現解析を行う。シロアリ女王の脂肪体に関しては裸核した細胞核を用いてシングルセル解析を行い、より詳細に細胞タイプを記述する一方で、倍数性ごとに分取したサンプルを用いて遺伝子発現量およびパターンを比較する。アブラムシの共生器官に関しては、申請者が確立した微粒子ピックアップデバイスを用いて、1核からの遺伝子発現解析を行う。解析を進める過程で、核サイズ(倍数化レベルと強く相関)の違いによってどのような遺伝子発現の変化が生じるのかを明らかにする。また、特に染色体分離や細胞周期に関わる因子にも着目して解析を行い、倍数化メカニズムについても考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は所属が変更となり、それに伴いエフォートの変更をおこなったため、研究の進捗がやや遅れた。具体的には初年度に予定していた遺伝子発現解析等を本年中に行うことができなかった。一方で解析を進める上での基礎情報・予備実験を行うことはできたため、次年度にそれらの実験(ライブラリ作成およびドライ解析)を行う予定である。
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