研究課題/領域番号 |
22K14905
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
遠藤 悠 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員 (50837474)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 味覚受容体 / 脳 / 栄養センシング |
研究実績の概要 |
本研究は,ショウジョウバエをモデルとして脳内味覚受容体の機能解明を目的とする.二光子顕微鏡を用いた生体内カルシウムイメージング等を用いて,脳内味覚受容体やその発現ニューロンの栄養センシングに関わるいくつかの仮説を検証することにより,「なぜ味覚受容体が脳内に発現しているのか」という長年の謎に対する答えを見出す. 2022年度はまず,脳や血液の循環を正常に保ったまま味覚受容体発現ニューロンの活動を記録する系の構築を行った.一般にハエ脳の生体内イメージングを行う際には,脳周辺の表皮や脂肪組織などを除去し,脳の活動を正常に保つため生理食塩水を灌流しながら記録を行う.しかしこの方法では,通常ハエ個体で起こっている摂食前後の血糖レベルの変動を追うことができない.そこで,解剖して脳を露出させたのち,生体毒性の低い接着剤Kwik-Silを用いて頭部をシールした.色素入りの生理食塩水を用いて,このように準備したハエの血液の循環が正常であり,かつシールの上下の液が少なくとも記録中には混合しないことを確認した.次に,味覚受容体発現神経にカルシウムプローブGCaMP6sを発現させ,ショ糖液を摂食する際のこの神経の応答を記録した.その結果,潜時の短い応答は観察されなかったため,味覚受容体発現神経は口や咽頭における味刺激には応答しないことが示唆された. また,栄養センシングに係る神経回路を特定するため,ショウジョウバエ成虫脳の全コネクトームデータ上において味覚受容体発現神経を同定することを試みた.味覚受容体発現神経の免疫染色像を電子顕微鏡像と照合させた結果,形態的特徴が極めて一致する有力候補を見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内カルシウムイメージングについて,非侵襲に近い状態で味覚受容体発現神経の活動を記録できる系を確立することができ,今後さまざまな刺激に対する応答を記録するための準備が整ったため.また,味覚受容体発現神経の上流・下流ニューロンの網羅的情報が入手できたことで,栄養センシングに係る神経回路を特定するための手がかりが得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
さまざまな刺激に対する味覚受容体発現神経の応答のダイナミクスを記録する.レポーターアッセイや化学遺伝学的手法を駆使することによって,当該神経の機能に関する仮説を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実体顕微鏡の購入費を計上していたが、研究室の顕微鏡使用状況に想定以上に余裕があり、早急に自前で購入する必要がなくなったため。引き続き実体顕微鏡の必要がない場合には、行動追跡装置のPCや復活したオンサイト国際学会の参加費用等に充てる。
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