研究課題
本研究では、河川沿いの巨木の存在がどのように河川地形を形成し、多様な水生生物の共存を可能にしているのかについて研究をしている。当年度は河川の倒木がどのように河川地形を維持・形成しているのか調べるため、北海道大学雨龍研究林のブトカマベツ川流域において河川沿いの倒木の分布と氾濫原地形に関する調査を行った。結果として同じ河川の中でも枝分かれが激しく氾濫原の発達した部位と比較的単調な一本の川の流れとなっている部分があること、そして氾濫原の発達した部分には倒木が多くみられる傾向があることが分かった。さらに、氾濫原地形をどのように水生生物が利用しているのかについて調べるため、ブトカマベツ川流域において26の氾濫原池の生物相調査を行い、河川と氾濫原水域のつながりと水生生物相の関係についても調べた。また、漁協や研究林・町など地元の関係者とともに氾濫原復元プロジェクトを実施し、これを本研究の操作実験ともとらえて、河川と氾濫原の連続性がどのように水生生物相に影響を与えるのかについて実験的研究を行った。2022年8月に接続性を変化させる操作を行ったので2023年度以降その評価を行っていく。さらに、氾濫原地形と生物相の関係について、他のプロジェクトと合わせてインドネシア西カリマンタン州およびアメリカモンタナ州の天然の氾濫原においても調査研究を進めた。また、倒木と河川地形の関係について、河川地形の専門家と共に文献レビューを行い、国際誌に掲載された。この関係でさらに2本のレビュー論文が投稿準備中である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた倒木と地形に関する調査に加えて、地元関係者の協力により河川地形の実験的操作が実現した。今後この操作の影響も評価していく。さらに、アメリカで倒木と河川地形の研究を行っている研究者らと共に倒木が河川の地形と生態系に及ぼす影響についての文献レビューを行い、レビュー論文が国際誌に掲載された。当初想定していた以上の進捗である。
今後は氾濫原の水生生物相が年による水のダイナミクスや地形の変化にどのように応答するのかについてモニタリングを続ける。さらに、氾濫原の操作実験の効果についても年に一度のモニタリングを継続する予定である。また、倒木と河川地形の関係に関しては、アメリカと北海道の川での共同研究をさらに進めていく予定である。2023年6-7月にはアメリカにおいて氾濫原地形の残るモンタナ州で倒木と河川地形・生物相の共同研究を行い、2023年9月にはこれまで継続して研究を行ってきた北海道ブトカマベツ川の氾濫原にアメリカの共同研究者を招聘し、共同で倒木と氾濫原地形に関する研究を進める。
予定していた電気ショッカーの購入などにおいて、他の研究経費で購入した機器を使用することができたので今年度は購入に至らなかった。次年度以降、必要な機器を順次購入していく計画である。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
River Research and Applications
巻: - ページ: -
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Hydrobiologia
巻: 849 ページ: 4203-4219
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IOP Conf. Ser.: Earth Environ. Sci
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