研究課題/領域番号 |
22K14916
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
池田 敬 岐阜大学, 応用生物科学部, 特任准教授 (70761526)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カメラトラップ調査 / くくりわな捕獲 / 警戒行動 / 順応的管理 / テレメトリー調査 / 分布 / 有蹄類 |
研究実績の概要 |
福井県で実施したニホンジカ(以下,シカ)の誘引くくりわな捕獲における情報を収集した。その後,捕獲地点の特徴と地域差を評価するために,設置からの稼働日数と地形起伏指数,道路や農地からの距離,捕獲地点周辺における広葉樹林面積との関係を調査した。その結果,わな設置からの稼働日数と捕獲の有無に負の関係性が見られ,稼働日数が長期になると捕獲されにくいことが明らかとなった。また,捕獲確率0.5を下回る変曲点は,地域によって異なり,短期間である地域と長期間である地域に区分された。この結果は,地域によって,誘引くくりわな捕獲を実施する期間を最適化できる可能性がある。 同所的に生息するシカとイノシシ,ニホンカモシカ(以下,カモシカ)の警戒行動を評価するために,岐阜県内の3地域に自動撮影カメラを20台ずつ設置した。その結果,自動撮影カメラの起点や終点からの距離に応じて,3種の撮影頻度や夜間の撮影割合は変化していなかった。以上の結果だけを考慮すると,同所的に生息する3種の警戒行動は変化していないことを示唆している。 伊吹山における相対的な生息密度の年次変化を追跡するために,2023年6月にスポットライトカウント調査を用いて生息状況を把握した。その結果,平均相対生息密度は61.67頭/10kmであり,この結果は2022年に実施した結果と同等であった。また,岐阜県とも連携し,2023年10月に成獣メス2頭を追加で捕獲した。その結果,低標高で捕獲した個体は利用標高における季節性は見られなかったが,残りの4頭は,調査年に関係なく,3月から11月では標高の高い地点を利用し,12月から2月では標高の低い地点を利用していた。追跡個体の行動圏は,3月から11月では狭い範囲を集中的に利用していた一方で,12月から2月では季節的な移動も含めて,比較的広い範囲を利用していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的1については,令和4年度において洞爺湖中島,令和5年度において福井県の捕獲情報を利用した結果,シカにおける捕獲地点の特徴を抽出したため,調査は順調に進んでいる。 目的2については,岐阜県美濃加茂市におけるくくりわな捕獲では,捕獲と調査を同時に実施することが困難であり,イノシシの捕獲に対する警戒行動を把握できなかった。その一方で,シカとイノシシとカモシカが同所的に生息する森林で自動撮影カメラを設置し,動画で撮影した結果,各種の警戒行動や撮影頻度,日周活動を同時に評価できる可能性が示唆された。 目的3については,スポットライトカウント調査を継続的に実施し,GPS首輪による追跡個体から各月の行動圏や利用標高を評価したため,調査は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
目的1については,イノシシやニホンカモシカの捕獲情報が収集しやすい地域を抽出することが困難であるため,シカにおける捕獲地点の特徴に関する研究成果をまとめる。 目的2については,シカとイノシシとカモシカが同所的に生息する地域を岐阜県で3地域追加し,撮影された動画から各種の警戒行動や撮影頻度,日周活動を評価する。加えて,過去に同様の調査を実施した5地域のデータも活用し,自動撮影カメラの起点や終点からの距離に応じた,各項目の違いを検証し,整理する。 目的3については,夏季にスポットライトカウント調査を実施し,相対的な生息密度の年次変化を追跡する。また,GPS首輪から収集された測位データを用いて,行動圏や利用標高だけではなく,季節的な生息地利用の解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的2の調査地の設定が順調に進まず、予定額よりも旅費を使用することはできなかった。 翌年度分として請求した助成金は,動画の解析に対する謝金を想定している。
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