本研究の目的は、中大型動物による採食行動が枯死木に生息する節足動物群集にあたえる影響を解明することである。そのために、中大型動物の食性調査と節足動物群集調査を行い、中大型動物による捕食がどのような枯死木依存性節足動物に影響するかを特定する。また、RFID タグを活用した枯死木の追跡調査、自動撮影カメラを用いた中大型動物の行動調査および節足動物群集調査を行い、中大型動物がどれくらい枯死木を移動させるか、それに伴う枯死木の周辺微環境の変化が枯死木依存性節足動物群集を変化させるかを検討する。 本年度は枯死木に生息する節足動物相調査および哺乳類の食性調査のための糞サンプル収集を行った。これにより、どのような枯死木にどのような節足動物が生息しているかについてのデータを得て、中大型動物による捕食の間接的な影響(枯死木が破壊されることによる生息場所の喪失)を受ける節足動物種について検討した。また、将来実施するゲノム分析用の試料(節足動物サンプル)を得ることができた。 屋久島における枯死木バイオマスのモニタリングと自動撮影カメラを用いた動物調査を継続実施した。2020 年に設置した調査区のうち、まだ材の分解が完了していない調査区を対象とし、どんな動物が枯死木を訪問・破壊するか、枯死木の体積減少に動物の行動が影響するかについてのデータを収集している。前課題で設置した調査区であるが、本課題の礎となる重要なデータであるため、モニタリング完了までデータ収集と調査区のメンテナンスを継続する。 計画段階では国内 4 ヶ所で調査を行うことを予定していたが、予算の都合で調査地を屋久島と静岡大学演習林に限定することとした。これまで活動経験のある調査地に予算と調査努力を集中させることで、効率的な調査を行うとともにロバストな結果を得る。
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