研究課題/領域番号 |
22K14920
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
木村 誇 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (90758559)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 樹木根系 / 崩壊抑止効果 / 航空レーザー測量 / 植生高モデル / 単木識別 / 火山灰土層 / 表層崩壊 / 地震 |
研究実績の概要 |
本研究は、高精細な航空レーザー測量データ(ALSデータ)を用いて樹木個体のサイズや粗密を解析し、そこから推定される樹木根系の分布・発達状況と表土層緊縛力の違いを広域で定量化する。そして、地震によって発生した表層崩壊の分布との比較から、樹木根系による地震時の表層崩壊抑止効果を見積ることを目的とする。 2022年度はCOVID-19感染症流行により現地調査を行うことができなかったが、解析対象地域の地質・地形・植生などの基礎情報の収集整理、解析基盤の整備、解析手法の検討、樹木根系の分布推定および樹木根系による表土層緊縛力の推定に関わる文献調査などの机上調査を中心に進めた。 熊本県・阿蘇地域については、地震前後のALSデータを収集整理したうえで、樹高・樹木密度分布モデル構築のための予備解析を行った。北海道・胆振東部地域については、地震前後のALSデータのほか、森林調査簿データが得られたので、これらをGISソフト上で重畳して解析対象範囲の検討を行った。なお、阿蘇地域では、ALSデータ間のオフセット(位置座標や標高の系統誤差)が認められたことから、オフセットの量や分布を解析した結果、地震時の地表変位に伴うものであることがわかり、誤差補正ができる見通しが立った。 Pit-free法を用いた樹木個体の単木識別およびサイズ推定の解析手法については、既往研究に示されている手順の追試的解析を行い、一部の手順(ALS点群データの階層化、樹冠範囲および樹頂点位置の特定)について、解析の効率化のための改良を行った。また、近年の樹木根系研究に関する文献調査から、樹種による根系の構造やバイオマス(地上部との相対成長関係や資源配分様式)の違いに関する知見を得た。これらは根系緊縛力の評価に大きく関わるため、さらなる文献調査と適切な取り扱いが必要になることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、COVID-19感染症流行の影響で現地調査を実施することが困難であったため、ALSデータ解析精度の検証に必要な現地計測の樹高・樹木密度データを得ることができなかった。また、ALSデータの解析準備に予想以上の時間・労力を要したために、対象2地域の樹高・立木密度分布モデルを構築するには至らなかった。 ただし、ALSデータの誤差補正についての一定の解決策が得られたため、今後の解析を円滑に進めることができる。また、基礎情報の収集整理、解析基盤の整備、解析手法の検討、樹木根系の分布推定および樹木根系による表土層緊縛力の推定に関わる文献調査などの机上調査を進めてきたことで、解析手順や個別の研究課題への解決方針を再検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、研究内容を以下の4項目に分けて次の順序で進めている:(1)地震による表層崩壊発生箇所の特定、(2)高精細測量データの形状解析に基づく樹木個体の識別と個体サイズ、分布密度の計測、(3)樹木根系による表土層緊縛力の広域推定、(4)表土層緊縛力と表層崩壊の発生密度、面積割合との対応関係の解析。 2023年度は、上述の項目のうち(1)、(2)を中心に進める予定である。 また、項目(3)のうち、表土層緊縛力の推定計算の前段階として、森林の樹種組成、樹木個体のサイズ、立木密度をもとに、根系バイオマスの分布推定を試みる。
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