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2023 年度 実施状況報告書

樹脂含浸技術の応用による木質接合部の高耐力化

研究課題

研究課題/領域番号 22K14925
研究機関静岡大学

研究代表者

小川 敬多  静岡大学, 農学部, 助教 (10805021)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード木材 / 木質接合部 / 樹脂含浸
研究実績の概要

木質接合部が外力によって変形する際,木材と木材が接触する場合が多い。このようなケースでは,木材の横圧縮(繊維の直角方向に作用する圧縮)が発生することがある。横圧縮は,木材に作用するの様々な負荷様式のなかでも弱く(弾性係数が低く),したがって,このような接合部の耐力性能において横圧縮性能が支配的となることが多い。横圧縮性能の向上は,木質接合部の耐力性能向上に直結すると考えられ,令和5年度では,樹脂含浸技術を用いた横圧縮性能の向上を試みた。
スギ材を対象に,樹脂含浸処理を行った。載荷部となる箇所に,予めUVレーザーを照射して穿孔を設けた。続いて,その穿孔を侵入口として,液状樹脂を流し入れた。これにより,木材の載荷部周辺の細胞内が樹脂で満たされている。最後に樹脂に硬化処理を施した。
樹脂含浸により,横圧縮性能の向上がみられた。例えばアクリル系樹脂(重合開始剤を混合するタイプ)を用いた場合では,横圧縮弾性係数は1.5倍となった。しかしながら,ウレタン系樹脂(有機溶媒を揮発して硬化させるタイプ)を用いた場合では弾性係数はほとんど向上しなかった。これは,蒸発残分が40%であり,樹脂硬化後に多くの空隙が存在したことが原因と考えられる。
加えて,部分横圧縮性能についても実験した。一般的に部分横圧縮時は,全面圧縮時と比較して,余長部での変形に相当する抵抗力が追加され,結果として剛性は高くなることが知られている。ウレタン系樹脂を用いた場合では,部分圧縮時の剛性増大の程度が大きくなった。また,降伏耐力においても性能の向上が明確に現れており,例えばウレタン系樹脂を用いた場合ではコントロール材の2.5倍,アクリル系樹脂を用いた場合は2.9倍となった。
以上のように,樹脂含浸を施すことで,木材の力学的弱点とされてきた横圧縮に対して,性能の向上を実現することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り,木質接合部の耐力性能において支配的要因である横圧縮特性を対象に,十分な実験量に基づいた知見を得ることができた。

今後の研究の推進方策

樹脂含浸を施すことにより,木材の様々な負荷様式において力学性能が向上することが明らかになってきた。今後は,この要素試験結果を念頭にし,実大の木質接合部レベルで考えた場合にどの程度の性能向上をもたらすのかを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

謝金業務を予定していた内容を自身で実施し,また,試験用材料も調整を図ることで若干の余剰金が発生した。
現在,国際誌へ論文を投稿しており,採択されると投稿費をドル建てで支払うことになる。昨今の円安による投稿費の増大分,今回の余剰金でまかなうことを予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Effect of resin impregnation into wood cell on lateral resistance of screwed joint connecting solid wood and steel plate2023

    • 著者名/発表者名
      Keita Ogawa, Kenji Kobayashi, Satoshi Fukuta
    • 学会等名
      WCTE2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 樹脂含浸によるスギ材の等変位めり込み性能の向上2023

    • 著者名/発表者名
      小川敬多,小林研治
    • 学会等名
      2023年度日本建築学会大会学術講演会(近畿)

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公開日: 2024-12-25  

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