研究課題/領域番号 |
22K14927
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 昌嗣 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00872988)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | バイオマス / リグニン / 発色団間距離 / 加溶媒分解 / 超・亜臨界流体処理 |
研究実績の概要 |
リグニン発色団同士の距離を制御する手法として、超(亜)臨界溶媒処理等の熱化学処理によるバイオマスの加溶媒分解に着目した。処理過程でリグニンの結合開裂が生じると同時に、リグニン分子内に溶媒由来の構造が導入され、分子の溶媒への親和性を高めることで、高い脱リグニンが達成される。つまり加溶媒分解を活用し、立体化学的に発色団同士の距離を引き離し、さらに導入する溶媒構造の違いにより発色団間距離、つまり発光特性を制御できると考えた。そこで、本研究の目的は、熱化学処理による加溶媒分解をリグニン抽出法として用い、リグニン分子内への化学構造の導入による発色団間距離の制御、すなわち高濃度条件下での発光特性の制御を可能にすることである。 本年度は、研究機関の異動に伴い、高温高圧条件対応の熱化学処理装置のセットアップに時間を要したため、当初の想定より進捗状況は遅れている。しかしながら、興味深い研究結果が得られており、次年度以降に大幅な推進が見込まれる。具体的には、スギ(Cryptomeria japonoca)辺材及びブナ(Fagus crenata)辺材から調製した脱脂木粉を用い、フェノールと一緒にインコネル-625製のバッチ反応管に封入し、塩浴で処理を行った。得られた可溶部から溶媒であるフェノールを除去するために、貧溶媒を用いた滴下法でリグニン由来物を単離した。得られたリグニン由来物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、フォトルミネッセンススペクトルを測定した結果、磨砕リグニンに比べて極めて高い蛍光強度が得られた。なお、フェノール単体ではほとんど蛍光は認められず、この傾向がリグニンに起因することが示唆された。また、反応時間や反応温度の条件、スギとブナでも発光特性に違いが認められた。現在、発光特性とリグニン構造との相関について詳細を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究機関の異動に伴い、高温高圧条件対応の熱化学処理装置のセットアップに時間を要したため、当初の想定より進捗状況は遅れている。しかしながら、興味深い研究結果が得られており、次年度以降に大幅な推進が見込まれる。具体的には、スギ(Cryptomeria japonoca)辺材及びブナ(Fagus crenata)辺材から調製した脱脂木粉を用い、フェノールと一緒にインコネル-625製のバッチ反応管に封入し、塩浴で処理を行った。得られた可溶部から溶媒であるフェノールを除去するために、貧溶媒を用いた滴下法でリグニン由来物を単離した。得られたリグニン由来物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、フォトルミネッセンススペクトルを測定した結果、磨砕リグニンに比べて極めて高い蛍光強度が得られた。なお、フェノール単体ではほとんど蛍光は認められず、この傾向がリグニンに起因することが示唆された。また、反応時間や反応温度の条件、スギとブナでも発光特性に違いが認められた。現在、発光特性とリグニン構造との相関について詳細を検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、引き続き亜臨界フェノール処理で得られたリグニン由来物の詳細な構造解析及び発光特性解析を進める。具体的には、得られた各種リグニン由来物に対し、高次構造を意識した多角的なアプローチで構造解析を行う。具体的には、二次元核磁気共鳴分析及び化学分解法(チオアシドリシス、ニトロベンゼン酸化分解等)を用いた基本骨格・結合様式の解析や、フェノール性水酸基やメトキシル基等の官能基分析、ゲル濾過法を用いた分子量分布分析を行う。さらに、動的光散乱法による粒径分布、フーリエ変換型赤外分光を用いた分子振動状態評価による会合体形成評価に加え、Rose-Bengal Dye法、フィルムの接触角等による親水性の評価を検討する。また、リグニン由来物の発光特性を解析するため、種々溶媒に溶解し、紫外可視吸光(UV-Vis)及び蛍光(FL)スペクトルを測定する。特に高濃度条件下での消光現象の確認、及び蛍光寿命の測定によるエネルギー移動の有無を重点的に行う。
|