研究実績の概要 |
本年度は,噴火湾周辺海域に生息する生物種を音響散乱強度のデータから判別するための基礎的なデータを収集した。 2022年4月から6月の各月で,北海道大学附属練習船うしお丸を用いて噴火湾周辺海域での調査を行った。本調査では,あらかじめ設定した観測ライン上を航走しながら計量魚群探知機で周波数38, 120, 200 kHzの音響散乱強度を測定し,その水平分布を調べた。また,観測ライン上に設けた観測点でプランクトンネットを用いた動物プランクトンの採集を行い,観測した音響散乱データにどのような生物が含まれているかを確認した。同観測点でCTDによる水温・塩分の鉛直プロファイルの測定も行い,生物の生息環境を調べた。 2007年から2015年の間に噴火湾周辺海域で得られた生物採集と同時に収録した計量魚群探知機の音響散乱強度のデータの整理・解析を行った。生物採集の結果,ある生物が優占していた(湿重量で80 %以上)データをその生物の特徴を表しているデータと考え,カイアシ類,タンキャク類,オキアミ類,スケトウダラ仔稚魚それぞれについて周波数38, 120, 200 kHzの周波数特性を調べた。周波数特性の指標となる周波数ごとの音響散乱強度の差をそれぞれの生物種について求めた結果,差分の値の平均値は生物種によって違うものの,値の範囲は重なっており,それぞれの種判別に直接つながるデータは得られなかった。同じ生物種でも体長が異なるデータが混ざっていたことから,今後は体長別にデータを整理し,その影響についても考察する必要があると考えられた。
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