本研究では、養殖魚類の初期餌料として広く利用されているワムシの培養自動化を目指し、深層学習を活用してワムシの健康状態を動画像から自動診断するシステムの構築に取り組んだ。 初年度(2022年度)は、ワムシの動画データセットの収集とアノテーション、および動画からワムシと卵の数、動きを測定する手法の実装を進めた。最終年度(2023年度)では、まず初年度の成果をまとめ、論文誌に投稿した。また、初年度に収集したデータセットとシステムを使いやすく整備した上で公開した。だが、論文誌については査読に時間を要し、まだ公開には至っていない。 初年度の研究結果より、顕微鏡で撮影する場合は現場での実用性の観点から、画像での検証をより十分に行う必要があることがわかった。そこで、実際に養殖現場で飼育されているワムシの画像を収集し、アノテーションを行い、データセットを拡充した。また、初年度構築したシステムを改良し、大きさの測定と摂餌状況の認識を行えるように実装中である。本年度行う予定であった、指標の相互関係の解析もまだ実施中だが、近いうちに成果をまとめて論文誌への投稿を予定している。 本研究の成果として、ワムシの健康状態を自動診断するシステムの基盤を構築できた。今後は、養殖現場で撮影した画像データの解析を続け、システムの実用化に向けた改良を行う。培養液を流しながら写真を撮影するデバイスも普及し始めており、将来的にはそのようなデバイスも活用したい。また、アルテミアなどワムシ以外のプランクトンにも本システムを適用できるか検討してインパクトを拡大させ、養殖業界における生産性向上と労働負担の軽減に寄与したい。
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